継続賃料の「直近合意時点」とは?賃料増額鑑定で重要になる理由を不動産鑑定士が解説
賃貸物件を所有している方から、
「周辺の賃料が上がっているので、そろそろ賃料を上げたい」
というご相談を受けることがあります。
一方、借主側から、
「貸主から大幅な賃料増額を求められたが、本当に適正なのだろうか」
というご相談をいただくこともあります。
こうした賃料の増額をめぐる問題で、非常に重要となるのが「直近合意時点」です。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、継続賃料の鑑定評価では非常に重要な概念です。
なぜなら、継続賃料を考える際には、単に「現在の周辺相場はいくらなのか」を調査するだけでは十分ではないからです。
現在の賃料を貸主と借主がいつ、どのような経緯で合意したのか。そして、その時点から現在までに地価、物価、公租公課、周辺賃料などがどのように変化したのかを分析していく必要があります。
その分析の重要な出発点となるのが「直近合意時点」なのです。
この記事では、直近合意時点とは何か、契約更新日との違い、賃料を据え置いた場合や自動改定した場合の考え方、さらには継続賃料を不動産鑑定する際のポイントまで、不動産鑑定士が分かりやすく解説します。

継続賃料とは?
まず、「継続賃料」そのものについて確認しておきましょう。
継続賃料とは、すでに存在している賃貸借契約を前提として、その契約を継続する場合における賃料です。
例えば、オフィスビルを月額100万円で10年間借りている会社があるとします。
契約を開始した10年前と現在では、
- 土地価格
- 建物価格
- 固定資産税
- 物価
- 周辺のオフィス賃料
- 金利や経済情勢
などが変化している可能性があります。
そこで「現在も月額100万円が適正なのか」という問題が生じます。
このような場面で検討されるのが継続賃料です。
国土交通省の資料でも、継続賃料について、借地借家法における賃料増減請求権との関係や、それまでの賃貸借契約の経緯を踏まえて評価することが重要な問題として整理されています。
新規賃料と継続賃料は違う
特に注意したいのが、新規賃料と継続賃料は同じものではないということです。
新規賃料は、新たに不動産の賃貸借契約を締結する場合の賃料です。
これに対して継続賃料では、すでに貸主と借主との間に契約関係があります。
そのため、
「隣のビルが坪2万円で募集されているから、この物件の継続賃料も坪2万円である」
とは単純には判断できません。
現在の市場賃料は重要な参考資料ですが、それだけで適正な継続賃料が決まるわけではないところに、賃料鑑定の難しさがあります。
継続賃料が問題になる代表的なケース
継続賃料の鑑定が必要になる場面はさまざまです。
例えば次のようなケースがあります。
①賃料を増額したい場合
この場合は、貸主側がアクションを起こすことになります。
地価、建築費、人件費、固定資産税などが上昇している場合、貸主としては賃料の見直しを検討することがあります。
特に長期間にわたって賃料を据え置いている物件では、現行賃料と現在の市場水準との間に大きな差が生じていることがあります。
②賃料を減額したい場合
反対に、周辺の賃料水準が大幅に下落した場合などには、借主が賃料減額を検討することがあります。
③貸主から賃料増額を求められた場合
貸主から賃料の増額をお願いされたからと云って、それをそのまま受け入れるのが適切とは限りません。
従って、借主側にとっても賃料鑑定は重要です。
貸主から、
「周辺相場が上昇したので、来月から家賃を20%上げます」
と言われたからといって、その増額率がそのまま適正な継続賃料を示しているとは限りません。
このように、賃料鑑定は貸主だけのために行うものではなく、借主にとっても現在の賃料や提示された改定額の妥当性を検討するための手段となります。
④借主から賃料減額を求められた場合
③とは反対になります。
借主から賃料の減額をお願いされたからといって、それをそのまま受け入れるべきではありません。
提示された賃料が適正な水準にあるのかどうかを、賃料鑑定で検証すべきです。
「直近合意時点」とは何か
ここからが今回の記事の中心です。
不動産鑑定評価における直近合意時点とは、
「契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点」
を意味します。
例えば、次のケースを考えてみましょう。
- 2010年:賃貸借契約を締結
- 当初賃料:月額100万円
- 2018年:貸主と借主が協議
- 2018年:月額110万円への変更を合意
- 2026年:再度賃料改定を検討
このケースでは、現行賃料110万円について最後に当事者間で合意した2018年が、基本的には直近合意時点を検討する際の中心となります。
したがって2026年に継続賃料を評価する場合には、2018年以降の事情変更などを分析することが重要になります。
なぜ「直近」なのか
重要なのは、最初に契約した時点から現在までのすべての変化を、そのまま現在の賃料に反映させるわけではないということです。
先ほどの事例では、2018年に貸主と借主がその時点における事情を踏まえて110万円という賃料に合意しています。
それにもかかわらず、2010年まで単純に遡ってすべての変動を現在の賃料に反映すれば、2018年の合意を適切に考慮しないことになってしまいます。
そのため、現在の賃料について貸主と借主が最後に合意した時点が重要になるのです。

なぜ直近合意時点が継続賃料鑑定で重要なのか
直近合意時点が重要なのは、そこが事情変更を分析する重要な起点になるからです。
国土交通省の継続賃料に関する検討資料でも、「直近合意時点及び価格時点の考え方」が独立した章として整理され、事情変更や諸般の事情、鑑定評価手法などとの関係が検討されています。
地価の変化
例えば直近合意時点が2015年なのか、2022年なのかによって、分析する地価変動の期間は大きく異なります。
長期間地価が上昇している地域では、これは非常に大きな問題になります。
固定資産税等の公租公課の変化
不動産を所有していれば、固定資産税や都市計画税などの負担が発生します。
直近合意時点以降に土地・建物の評価額や税負担が変化していれば、それも継続賃料を検討する際の要素となります。
国土交通省の資料でも、公租公課、土地・建物価格、周辺または同一需給圏の賃料の変動等は、継続賃料を評価する際の重要な要素として整理されています。
周辺賃料の変化
周辺の賃料水準も重要です。
ただし、
「現在の周辺賃料が高いから増額する」
という単純な分析ではありません。
直近合意時点から現在まで、同じような物件の賃料水準や賃料改定の状況がどのように推移してきたのかを分析します。
契約更新をしたら「直近合意時点」になるのか?
ここで非常に重要な問題があります。
例えば、
- 2010年に賃貸借契約を締結
- 2015年に契約更新
- 2020年に契約更新
- 2025年に契約更新
していた場合です。
では、最後に更新した2025年が必ず直近合意時点になるのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
この点が直近合意時点を判断する際の難しいところです。
「更新」と「賃料についての合意」は同じではない
契約の更新にはさまざまなケースがあります。
例えば、
「契約期間が満了したので、従来と同じ条件で更新契約書を作成した」
というケースもあれば、
「更新にあたり貸主と借主が賃料について話し合い、現在の賃料で今後も契約を継続すると合意した」
というケースもあります。
また、自動更新や法定更新のため、当事者が賃料について何も話していないこともあります。
したがって、
更新した事実だけではなく、その際に賃料についてどのような協議や合意が行われたのか
を確認することが重要になります。
裁判例でも、書面上の更新という形式だけでなく、当事者間に実質的な賃料額の合意があったかが問題となっています。
賃料が変わっていなくても直近合意時点になることがある
「合意」という言葉を見ると、多くの方が、
賃料を変更した日
をイメージするのではないでしょうか。
ところが、必ずしも賃料が変わっている必要はありません。
例えば、月額100万円で貸していたオフィスについて、更新時に貸主が、
「周辺賃料も上昇しているので110万円にしてほしい」
と申し出たとします。
これに対して借主が、
「現在の経営状況から増額は難しい。現在の100万円を維持してほしい」
と回答します。
その後、双方が協議し、
「今回は100万円のままとしましょう」
と合意したとします。
金額だけを見ると何も変わっていません。
しかし実質的には、貸主と借主が賃料について検討し、100万円という金額について改めて合意しています。
裁判例でも、協議の上、従前と同額の賃料で更新契約を締結した事案について、その更新時点を直近合意時点と認めた例が紹介されています。
つまり、
賃料が変わったかどうかだけではなく、その賃料について双方の実質的な合意があったか
が非常に重要なのです。
賃料が変わっていても直近合意時点にならないことがある
一方、逆のケースもあります。
つまり、
賃料額は変わっているのに、その時点が直近合意時点になるとは限らない
ということです。
自動改定特約
例えば、
「賃料は3年ごとに10%増額する」
という契約を当初から締結していたケースを考えてみます。
3年後、契約の定めに従って賃料が100万円から110万円になりました。
しかし、その改定時に貸主と借主が110万円という金額が現在の経済状況から適正なのかを改めて話し合ったわけではありません。
最高裁平成20年2月29日判決を扱った国土交通省の調査資料でも、こうした継続賃料をめぐる最高裁判例が分析対象とされています。
したがって、賃料が変更された日と、新たな賃料について当事者が現実に合意した時点は必ずしも一致しません。
一時的な賃料減額
もう一つ分かりやすいのが、一時的な賃料減額です。
例えば新型コロナウイルス感染症の影響によって店舗の売上が大幅に減少し、
「6か月間だけ賃料を30%減免する」
という合意をしたケースです。
これは必ずしも、適正な継続賃料そのものを恒久的に30%引き下げたという意味ではありません。
あくまで特殊な事情を考慮した期間限定の措置である場合があります。
期間限定の一時減額を直近合意時点としなかった裁判例も紹介されており、金額が変化したという事実だけで判断することは適切ではありません。
直近合意時点はどのような資料から判断するのか
ここまで説明してきたとおり、直近合意時点は契約書の日付だけを見れば簡単に判断できるものではありません。
実際の賃料鑑定では、さまざまな資料を確認します。
代表的なものとして、
- 当初の賃貸借契約書
- 過去の更新契約書
- 賃料改定に関する覚書
- 賃料改定通知
- 貸主と借主との間の書面
- メールなどの交渉記録
- 請求書
- 入金記録
- 過去の賃料改定履歴
- 過去の調停・裁判に関する資料
などが考えられます。
重要なのは、いつ賃料が変わったのかだけでなく、なぜその金額になったのかを確認することです。
例えば同じ100万円という賃料でも、
「何も協議しないまま20年間100万円」
なのか、
「5年前に増額交渉をした結果、双方が100万円で合意」
したのかによって、評価上の意味は大きく異なる可能性があります。
直近合意時点を確定した後、何を分析するのか
直近合意時点の検討は重要ですが、それだけで適正な継続賃料が決まるわけではありません。
国土交通省の資料では、継続賃料固有の価格形成要因について、事情変更に係る要因と諸般の事情に係る要因を分析することが整理されています。
土地・建物価格の変動
地価が大きく上昇または下落した地域であれば、その変化を確認します。
建物を含む賃貸借の場合には、建物価格等についても分析を行います。
公租公課
固定資産税や都市計画税などの負担がどのように変化したのかも確認します。
周辺地域の賃料
同一または類似する用途の物件について、賃料水準がどのように推移してきたかを分析します。
契約内容
賃貸面積や契約期間だけではありません。
保証金・敷金、修繕負担、契約期間など、賃貸条件について総合的に確認する必要があります。
賃料改定の経緯
過去にどのような増額・減額交渉が行われていたのかも重要な情報になります。
つまり継続賃料は、単なる「相場調査」ではありません。
対象不動産の市場分析と契約関係分析の両方が必要になるところに特徴があります。
継続賃料はどのように鑑定するのか
継続賃料の鑑定では、直近合意時点等を確認したうえで、複数の評価手法を適用して適正な賃料を検討します。
代表的なものが次の4つです。
国土交通省の継続賃料に関する検討資料でも、差額配分法などの継続賃料に係る鑑定評価手法が詳細に検討されています。
差額配分法
差額配分法は、対象不動産について経済価値に即応した適正な実質賃料または支払賃料と、実際の実質賃料または支払賃料との差額を求め、その差額のうち貸主に帰属する部分を判定して継続賃料を求める方法です。
「現在の市場水準と現行賃料にこれだけ差があるから、その全額を直ちに現行賃料に加える」という考え方ではないことがポイントです。
利回り法
利回り法は、直近合意時点における対象不動産の基礎価格に対する純賃料の割合を基礎として、価格時点における適正な継続賃料利回りを判断して賃料を求める方法です。
そのため、土地・建物価格などの変動との関係が重要になります。
スライド法
スライド法では、直近合意時点における純賃料を基礎として、その後の経済情勢等の変動を示す適切な変動率を考慮します。
この方法からも分かるように、「どこから現在までの変化を見るのか」という直近合意時点の判断が重要です。
賃貸事例比較法
対象物件と類似する賃貸事例を収集して比較する方法です。
ただし継続賃料の場合、新規契約の募集賃料を単純比較するだけではありません。
継続賃料として比較可能な事例について、契約内容や賃料改定の経緯などにも注意しながら比較検討する必要があります。
直近合意時点によって賃料鑑定はどう変わる?
具体例で考えてみましょう。
東京都内のオフィスビルについて次のような契約があるとします。
| 年 | 内容 |
|---|---|
| 2012年 | 月額200万円で契約 |
| 2018年 | 契約更新 |
| 2022年 | 契約更新 |
| 2026年 | 貸主が賃料増額を検討 |
一見すると「2012年から14年間、賃料が変わっていない」と考えたくなります。
ところが、実際には契約更新の内容を調べる必要があります。
ケース1|更新時に賃料の協議をしていなかった
2018年、2022年ともに、形式的に契約を更新しただけで賃料について実質的な協議をしていなかったとします。
この場合、単純に2022年を直近合意時点と扱えるとは限りません。
ケース2|2022年に増額交渉をした
一方、2022年に貸主が、
「230万円にしたい」
と申し出て、その後双方が協議し、
「今回は200万円で継続しましょう」
と合意して更新契約書を作成していたとします。
この場合、2022年の合意が直近合意時点として重要になってくる可能性があります。
この違いは大きなものです。
2012年を起点として分析するのと2022年を起点として分析するのでは、考慮する事情変更の期間が10年も違います。
だからこそ、「何年間賃料が変わっていないか」だけを見て、増額または減額できると判断するのは危険なのです。
賃料増額・減額を検討するときに確認したい5つのポイント
賃料の増額・減額を検討している方は、まず次の5点を確認してみてください。
1.最後に賃料を変更したのはいつか
現在の賃料がいつから適用されているか確認します。
2.最後に賃料について協議したのはいつか
金額の変更がなくても構いません。
貸主と借主が最後に賃料について話し合った時期を確認しましょう。
3.契約更新時に賃料について話し合ったか
単なる更新だったのか、現在の賃料を維持することについて実質的な協議をしたのかは重要な違いです。
4.一時的な減額・増額がなかったか
コロナ禍、工事、業績悪化などを理由に期間限定の減免を行っている場合は、その内容を確認します。
5.資料が残っているか
契約書だけに限定せず、覚書、メール、通知書、交渉資料なども確認してください。
こうした資料が、直近合意時点を検討するうえで重要な手掛かりになることがあります。
賃料増減額交渉を始める前に不動産鑑定を行うメリット
賃料鑑定というと、
「裁判になってから依頼するもの」
というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではありません。
むしろ、本格的な賃料改定交渉を始める前の段階で、現在の賃料について客観的に検討しておくことには大きな意味があります。
現行賃料と市場水準との関係を把握できる
まず、現在の賃料が周辺の市場水準と比較してどのような位置にあるのかを把握できます。
「周辺相場が上がったらしい」という感覚的な判断ではなく、客観的な資料に基づいて検討できます。
賃料改定の根拠を整理できる
賃料を上げたい、または下げたいという主張だけでは、相手方の理解を得ることは難しい場合があります。
不動産鑑定では、
- 直近合意時点
- 地価の変動
- 公租公課の変動
- 周辺賃料の推移
- 契約内容
- 過去の賃料改定経緯
などから総合的に検討します。
したがって、賃料改定を検討するための客観的な資料になります。
貸主・借主双方から依頼できる
賃料鑑定は貸主だけが利用するものではありません。
例えば借主が貸主から賃料増額を求められ、
「提示された賃料は適正なのか」
と検討するために鑑定を依頼することも考えられます。
重要なのは、貸主側・借主側のどちらから依頼されたとしても、不動産鑑定士は対象不動産について専門家として客観的に評価を行うということです。
賃料鑑定は堤不動産鑑定株式会社へご相談ください
賃料の増額・減額を検討するとき、
「現在の周辺賃料はいくらなのか」
という市場調査はもちろん重要です。
しかし、継続賃料の鑑定ではそれだけでは十分ではありません。
現在の賃料について、
「いつ合意したのか」
「どのような経緯で合意したのか」
「その後、どのような事情の変化があったのか」
を整理する必要があります。
国土交通省も、不動産鑑定評価基準およびその運用上の留意事項を、不動産鑑定士が鑑定評価を行う際の統一的な基準として位置づけています。
堤不動産鑑定株式会社では、対象不動産の市場分析だけでなく、賃貸借契約書、更新契約書、賃料改定の履歴などを確認しながら、継続賃料の鑑定評価を行います。
- 長期間賃料を変更していない
- 周辺賃料が大きく上昇している
- 賃料増額を検討している
- 貸主から賃料増額を求められている
- 現在の賃料が適正なのか確認したい
- 賃料減額を検討している
- 直近合意時点がいつなのか分からない
このような場合には、本格的な交渉を始める前の段階でもご相談ください。
よくある質問
Q1.契約更新日が直近合意時点になりますか?
必ずしも契約更新日が直近合意時点になるとは限りません。
更新時に賃料についてどのような協議が行われ、当事者間で現行賃料について実質的な合意があったのかを確認する必要があります。裁判例でも、形式的な更新だけでなく当事者間に現実の賃料合意があったかが重要な論点となっています。
Q2.賃料を変更していなくても直近合意時点になることがありますか?
あります。
更新時などに双方が賃料について実質的に協議し、「現在と同じ賃料を維持する」と合意した場合などです。
そのため、「賃料が最後に変わった時点=直近合意時点」とは限りません。
Q3.自動更新の場合はどうなりますか?
自動更新されたという事実だけから、更新時点を当然に直近合意時点と判断するのは適切ではありません。
実際に賃料について当事者間の合意があったかなど、契約内容や更新の経緯を確認する必要があります。
Q4.自動的に賃料が上がる契約の場合はどうなりますか?
賃料額が実際に変更されていたとしても、その変更時点で当事者が賃料を現実に合意したとは限りません。
最高裁平成20年2月29日判決を紹介する資料でも、自動増額特約に基づく改定時点と直近合意時点との関係が重要な論点となっています。
Q5.コロナ禍で一時的に家賃を下げました。そこが直近合意時点になりますか?
一時的な救済措置として期間を限定して減額した場合などには、その時点が当然に直近合意時点になるわけではありません。
減額合意の内容や期間、その後どの賃料に戻す予定だったのかなどを確認する必要があります。一時的減免を直近合意時点とは扱わなかった裁判例も紹介されています。
Q6.昔の契約書が残っていなくても賃料鑑定できますか?
資料の状況によりますが、契約書以外にも更新契約書、賃料改定に関する覚書、請求書、入金記録、当事者間のメールなどから契約・賃料改定の経緯を確認できる場合があります。
まずは現在残っている資料を整理してご相談ください。
Q7.貸主・借主のどちらからでも鑑定を依頼できますか?
はい。
継続賃料の鑑定は、賃料を増額したい貸主からだけでなく、賃料の減額を検討している借主や、貸主から提示された増額の妥当性を確認したい借主などからの依頼も考えられます。
Q8.賃料増額交渉を始める前でも相談できますか?
可能です。
むしろ交渉を始める前に、現在の賃料、市場動向、契約内容、直近合意時点などを整理し、賃料改定について検討することには意味があります。
まとめ|継続賃料では「いつ、どのように合意したのか」が重要
継続賃料を考えるとき、多くの方がまず、
「現在の周辺相場はいくらなのか」
に注目します。
もちろん市場賃料の調査は重要です。
しかし、すでに貸主・借主の契約関係が存在している継続賃料では、それだけで適正な賃料を判断することはできません。
重要なのが直近合意時点です。
そして特に覚えておきたいのは、次の3点です。
- 契約更新日が必ず直近合意時点になるとは限らない
- 賃料が変わらなくても、直近合意時点となる場合がある
- 賃料が変わっていても、その変更時点が直近合意時点になるとは限らない
そのため、直近合意時点を検討する場合には、契約書だけを見るのではなく、更新契約書、覚書、過去の賃料交渉、メールなども含めて、現在の賃料がどのような経緯で決定されたのかを確認することが重要です。
さらに、その時点から現在までの地価、建物価格、公租公課、周辺賃料などの変化や賃貸借契約の内容を分析し、複数の鑑定評価手法を適用して継続賃料を判断していきます。国土交通省の検討資料でも、直近合意時点、価格形成要因、契約内容、鑑定評価手法が継続賃料評価の主要な論点として体系的に整理されています。
「長期間賃料を変更していないので見直したい」
「貸主から賃料増額を求められたが、提示額が適正なのか分からない」
「賃料を増額・減額するための客観的な根拠が欲しい」
「自分の契約では、いつが直近合意時点になるのか分からない」
こうした場合には、継続賃料に関する不動産鑑定をご検討ください。
賃料改定は、貸主・借主双方にとって将来の収支に長期間影響する重要な問題です。
堤不動産鑑定株式会社では、賃貸借契約の内容や過去の賃料改定の経緯を確認したうえで、対象不動産の市場動向を調査し、継続賃料の鑑定評価を行っています。
賃料についてお悩みの場合は、本格的な交渉に入る前の段階からお気軽にご相談ください。