賃料用語を徹底解説 知っておきたい7つのポイント

賃料用語を徹底解説 知っておきたい7つのポイント

賃料と一言でいっても、その内訳や意味は一つではありません。

地代と家賃の違い、新規賃料と継続賃料、さらには実質賃料や市場賃料など、目的や場面によって用いられる概念は大きく異なります。これらを正しく理解していないと、賃料水準の判断を誤り、不利な契約や交渉につながる可能性があります。特に、賃料の増額交渉や物件の資産価値を考えるうえでは、どの賃料を基準にすべきかが極めて重要です。

本記事では、不動産鑑定の実務に基づき、賃料に関する基本用語を体系的に整理し、実務での正しい使い分けを分かりやすく解説します。

この記事を読んで分かること

  • 家賃と地代の違い
  • 新規賃料と継続賃料の違い
  • 実質賃料と支払賃料の違い考え方
  • 限定賃料の考え方
  • 募集賃料と成約賃料の違い
  • 市場賃料の考え方と注意点
賃料の種類

家賃と地代

まず初めに、家賃と地代について整理します。
「賃料」と言った場合には、家賃と地代の両方を含みます。

土地の賃料を「地代」、建物の賃料を「家賃」といいます。

区分内容ポイント
地代土地の賃料借地契約を締結する
家賃建物の賃料間接的に土地も利用している

ここで、家賃について一点、専門的な補足をします。
先ほど「建物の賃料=家賃」と説明しましたが、建物だけを単独で借りるケースは通常ありません。
なぜなら、建物は土地の上に存在しており、土地がなければ建物は存立し得ないからです。

ですから、建物を利用するということは、その敷地である土地も同時に利用していることを、知っておいて下さい。
もっとも、これは理論的・抽象的な内容となりますので、本記事ではこれ以上深入りはしません。

ここで改めて整理すると、次のとおりです。

  • 土地の賃料:地代
  • 建物の賃料:家賃

この基本関係を押さえておいてください。
なお、以下では特に断りがない限り、「賃料」は地代と家賃の双方を指します。

新規賃料と継続賃料

新規賃料と継続賃料は、不動産鑑定の用語になります。やや専門的ではありますが、賃料を理解するうえで欠かせない概念です。
最近の賃料の上昇により、家賃値上げに悩まれる方が増えています。その影響と推測されますが、以前に比べると、継続賃料という言葉は、目にすることが多くなったように思います。

新規賃料と継続賃料の違い

区分内容決まり方
新規賃料新たに契約を結ぶ際の賃料市場相場を重視
継続賃料既存契約の更新・見直し時の賃料従前賃料との関係を考慮

それぞれのポイント

●新規賃料

  • 新たに貸す・借りる際に設定される賃料
  • 周辺の募集賃料や成約賃料などの市場データが基準

●継続賃料

  • 契約更新や賃料改定時に適用される賃料
  • 新規賃料も参考になるが、現在の賃料(従前賃料)との連続性も重視される

実務上の重要ポイント

新しく借りる場合は「新規賃料」、既存契約を前提にした見直しは「継続賃料」と整理すると分かりやすいでしょう。

なお、賃料の値上げ(増額交渉)の際に利用されるのは継続賃料です。

ここで重要なのは、継続賃料は単純な相場比較では把握できない点です。
新規賃料であれば、周辺の募集事例などから一定の水準感を把握できますが、継続賃料は、

  • 従前賃料
  • 契約関係
  • 個別事情

などを総合的に考慮して判断されるため、一般の方が算定するのは困難です。よって、継続賃料を知るには、不動産鑑定が必要となります。

このため、賃料増額交渉では不動産鑑定評価書が有力な根拠資料となり、場合によっては不可欠となることもあります。

支払賃料と実質賃料

支払賃料は想像がつくかと思われます。一方で、実質賃料は何なのか、思われるかもしれません。
敷金や礼金などを支払っている場合には、それらも賃料の一部となっており、実質的に賃料を負担していることになります。

支払賃料と実質賃料の違い

区分内容ポイント
支払賃料実際に毎月支払う賃料契約書に記載されている金額
実質賃料一時金等を考慮した賃料実質的に支払っている賃料

それぞれのポイント

支払賃料とは、借主が実際に毎月支払っている賃料のことです。
一般的には、契約書に記載されている月額賃料を指します。

これに対して実質賃料とは、支払賃料を基礎として、一時金(敷金・礼金・権利金等)の運用益及び償却額を考慮した実質的な賃料(実質的に賃料として支払っている賃料)をいいます。

実質賃料は、支払賃料に以下の2つを加算して求めます。

  • 敷金、保証金:運用益
  • 礼金・権利金:運用益及び契約期間で按分した償却額

ここでいう償却額とは、返還されない一時金を賃料の一部として期間配分するものです。
例えば、礼金30万円・契約期間2年の場合、単純計算で月額1.25万円(30万円÷24カ月)が賃料に上乗せされます。
少し難しくなりますが、上記では運用益及び償却額と記載しています。最初に礼金を30万円を預かっていますから、この礼金を運用しつつ、償却をしていくことになります。償却が進むにつれて、礼金額が縮小しますので、運用益も小さくなっていきます。

したがって、実質賃料は
「支払賃料+敷金・保証金の運用益+礼金・権利金の運用益及び償却額」
として把握されます。

実務上の重要ポイント

従来は、低金利ということもあり、運用益については、あまり意識をされなかったかもしれません。
しかし、近年は金利上昇の影響もあり、資金コストの観点から、今後は実質賃料で賃料を把握する重要性が高まっていくのではないかと考えています。

地代については、旧来の借地契約では一時金がないケースも多く、その場合は
支払賃料=実質賃料となります。

家賃でも同様です。敷金、礼金無しの物件がそうです。

限定賃料

限定賃料とは、鑑定用語になります。特定の状況下で成立する賃料を指します。

一般的にはあまり意識されませんが、実務では頻繁に見られる概念です。

例えば、事務所ビルのワンフロアを賃貸募集しているケースを考えてみましょう。
ここに、一部分のみを借りたいテナントが現れたとします。
貸主は、フロア全体での貸し出しを前提に賃料を設定していますので、一部区画のみを貸すと、

  • 残り部分の形状が悪化
  • 使い勝手の低下
  • 残余部分の賃料低下

といった問題が生じることがあります。

このような場合、貸主は、分割した区画に割増した賃料にしないとが損をしてしまうことになります。このように、個別の事情により市場水準から乖離して形成される賃料を限定賃料といいます。

分割した区画

共益費込賃料(共込賃料、込賃料)

共益費込賃料とは、賃料に共益費(管理費)を含めた表示方法です。
「共込賃料」や「込賃料」とも呼ばれます。

例えば、

  • 賃料10万円
  • 共益費1万円

の場合、共益費込賃料は11万円となります。

オフィスや店舗では共益費が別途設定されることがあるため、実際の支払総額を把握するうえで重要な指標です。

最近は、大規模なビルを除くと、「月額〇万円(共益費込み)」といった表示が増えているように感じています。
そのため、賃料と共益費を別々に把握するよりも、共益費込賃料として把握することがより重要になってきているように思われます。

募集賃料と成約賃料

募集賃料と成約賃料については、よく使われる文言ではないでしょうか。
その意味するところも、字面のとおりですので、分かりやすいのではないかと思っています。

募集賃料と成約賃料の違い

募集賃料とは、貸主が提示する希望賃料です。
市場動向や戦略が反映されるため、やや高めに設定されることがあります。

一方、成約賃料は実際に契約が成立した賃料です。

  • 募集賃料:希望額
  • 成約賃料:実績値

という違いがあります。

実務上のポイント

賃料水準を把握する、という目的からすれば、成約賃料を重視することが重要です。
募集賃料のみを参考にすると、実態より高い水準として、賃料相場を把握することになる可能性があります。

市場賃料

市場賃料とは、自由な競争市場において合理的に形成される賃料水準を指します。
概念的には新規賃料と近いものと考えて差し支えありません。

ただし、募集賃料・成約賃料との関係には注意が必要です。

募集賃料は、貸主の意図が反映された希望賃料であり、必ずしも市場賃料とは一致しません。

一方、成約賃料は実際の契約価格ですが、

  • 早期成約を優先した低めの設定
  • 特殊事情による調整

などにより、市場水準から乖離する場合があります。

これを整理すると、

理論的には、市場賃料=成約賃料となるが、成約時に何らかの事情が介在した場合には、市場賃料≒成約賃料となる。

募集賃料は、市場賃料を基準にしますが、市場賃料よりも高めの水準で提示されることもあるため、一般的には、市場賃料≒成約賃料となることが多いでしょう。

したがって、市場賃料を適切に把握するには、単一のデータではなく、複数の事例を総合的に分析することが必要になります。

市場賃料

まとめ

本記事では、賃料に関する基本用語を体系的に整理しました。

重要なポイントは、賃料には複数の種類があり、「どの賃料を前提にしているか」で判断結果が大きく変わるという点です。
例えば、新たに貸し出す場合は市場ベースの新規賃料を基準としますが、既存契約の見直しでは継続賃料の考え方が重要となります。また、支払賃料と実質賃料には差がある場合も多く、一時金や共益費を含めた実態を把握しなければ、適正な賃料は把握できません。

さらに、募集賃料と成約賃料、市場賃料の関係を理解していないと、相場を誤認するリスクもあります。これらの用語は単なる知識ではなく、賃料交渉や資産価値の判断に直結する重要な概念です。特に継続賃料の判断は専門性が高く、客観的な根拠が求められるため、不動産鑑定の活用が有効な場面も少なくありません。

正しい知識を身につけることで、賃料を「感覚」ではなく「根拠」に基づいて判断できるようになるでしょう。

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