月例経済報告 令和8年(2026年)8月 米国通商政策から自然災害へ警戒対象が変化

月例経済報告 令和8年(2026年)8月 米国通商政策から自然災害へ警戒対象が変化

令和8年7月と8月の月例経済報告を比較すると、日本経済の先行きに対する政府の基本的な見方は大きく変わっていません。雇用・所得環境の改善や各種政策の効果を背景として、景気は緩やかな回復を続けることが期待されています。一方で、回復基調を維持するためには国内外のリスク要因にも目を向ける必要があります。

特に今回の比較では、7月にリスク要因として挙げられていた米国の通商政策に代わり、8月には自然災害が新たな懸念材料として追加されました。世界情勢や金融市場の動向だけでなく、国内で発生する災害リスクも経済活動に大きな影響を及ぼす時代となっており、景気の先行きを考える上では複数のリスクを総合的に捉えることが重要になっています。

この記事を読んで分かること

  • 景気は緩やかな回復が続く見込み
  • 雇用・所得環境の改善が追い風
  • 政府の経済対策も景気を下支え
  • 中東情勢は引き続きリスク要因
  • 8月は自然災害リスクが追加
  • 金融市場の変動にも注意が必要
解説

1.令和8年8月分について

令和8年8月と比較のために、令和8年7月も以下掲載します。

令和8年7月令和8年8月
基調判断景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある
個人消費持ち直しの動きがみられる。持ち直しの動きがみられる。
設備投資持ち直している持ち直している
住宅建設弱含んでいる総じて横ばいとなっている
公共投資堅調に推移している堅調に推移している
輸出このところ持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
輸入おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
貿易・サービス収支おおむね均衡しているおおむね均衡している
生産横ばいとなっている横ばいとなっている
企業収益改善の動きがみられるが、中東情勢の影響を注視する必要がある改善しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある
業況判断おおむね横ばいとなっている。ただし、先行きについてはやや慎重な見方となっており、中東情勢の影響を注視する必要がある。おおむね横ばいとなっている。ただし、先行きについてはやや慎重な見方となっており、中東情勢の影響を注視する必要がある。
倒産件数おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
雇用情勢改善の動きがみられる改善の動きがみられる
国内企業物価上昇しているこのところ上昇テンポが鈍化している
消費者物価緩やかに上昇している緩やかに上昇している
月例経済報告 令和8年7月、令和8年8月の比較。
住宅建設、輸出、企業収益、国内企業物価の表記に変化がある。

今月は、住宅建設、輸出、企業収益、国内企業物価の4項目に変化がありました。
先月は1項目だけでしたので、変動の多い月となりました。
以下、記述に変化のありました住宅建設、輸出、企業収益、国内企業物価について詳しくみていきます。

徹底解説

2.住宅建設

(1)令和8年6月と令和8年7月の比較

令和8年(2026年)7月と令和8年(2026年)8月の詳細を、以下記載します。

令和8年7月令和8年8月
住宅建設は、弱含んでいる。

新設住宅着工戸数は、5月は前月比4.6%増の年率75.7 万戸となった。

利用関係別にみると、持家及び分譲住宅は、弱含んでいる。

貸家は、底堅い動きとなっている。

なお、首都圏のマンション総販売戸数は、おおむね横ばいとなっている。

先行きについては、当面、弱含みで推移していくと見込まれる。
住宅建設は、総じて横ばいとなっている。

新設住宅着工戸数は、6月は前月比3.9%増の年率 78.6 万戸となった。

利用関係別にみると、持家及び分譲住宅は、弱含んでいる。

貸家は、持ち直しの動きがみられる。

なお、首都圏のマンション総販売戸数は、おおむね横ばいとなっている。

先行きについては、当面、総じて横ばいで推移していくと見込まれる。
令和8年7月・令和8年8月の住宅建設を比較:住宅建設は下げ止まり、弱含みから横ばいへ改善の兆し

(2)解説

  • 住宅建設の判断は「弱含み」から「総じて横ばい」へ改善
  • 新設住宅着工戸数は2か月連続で増加
  • 持家・分譲住宅は引き続き弱含み
  • 貸家は「底堅い」から「持ち直し」へ上方修正
  • 首都圏マンション販売は横ばいを維持
  • 先行き見通しも弱含みから横ばいへ改善

①住宅建設は改善の兆し

令和8年8月の月例経済報告では、住宅建設に関する政府の見方がやや前向きなものへと変化しました。7月の「弱含んでいる」から、8月は「総じて横ばい」と評価されており、住宅市場が下げ止まりつつあることがうかがえます。

②両月の内容を比較

項目令和8年7月令和8年8月
全体判断弱含んでいる総じて横ばい
着工戸数年率75.7万戸(前月比+4.6%)年率78.6万戸(前月比+3.9%)
持家・分譲住宅弱含み弱含み
貸家底堅い動き持ち直しの動き
首都圏マンション販売横ばい横ばい
先行き当面弱含み当面横ばい

③着工戸数は2か月連続で増加

新設住宅着工戸数は、5月の年率75.7万戸から6月は78.6万戸へ増加しました。

増加率は7月報告時の前月比4.6%から、8月報告時は3.9%とやや縮小していますが、戸数自体は増加しています。住宅需要が力強く回復しているわけではないものの、住宅建設は着実に下支えされている状況といえるでしょう。

④貸家市場が改善の中心

今回の変化で最も注目されるのは貸家です。

7月には「底堅い動き」とされていましたが、8月には「持ち直しの動きがみられる」と表現が改善しました。

これは、

  • 賃貸住宅需要が比較的堅調
  • 投資用アパート建設が下支え
  • 都市部への人口流入が継続

といった要因が背景にあると考えられます。

一方で、持家や分譲住宅については依然として「弱含み」とされており、住宅取得層の慎重な姿勢は続いています。

⑤マンション市場は横ばいが続く

首都圏のマンション総販売戸数は、両月とも「おおむね横ばい」とされています。

価格上昇によって購入負担が重くなる一方、都心部を中心とした需要は根強く、全体としては大きな増減のない状態が続いているようです。

⑥先行き見通しは改善

先行きについても変化が見られます。

7月は「当面、弱含みで推移」とされていましたが、8月は「当面、総じて横ばいで推移」と上方修正されました。

これは住宅市場が回復局面に入ったというほどではありませんが、少なくとも悪化傾向からは脱しつつあるとの見方を政府が示したものと考えられます。

⑦まとめ

令和8年8月の月例経済報告では、住宅建設の評価が「弱含み」から「総じて横ばい」へ改善しました。特に貸家市場の持ち直しと新設住宅着工戸数の増加がプラス材料となっています。ただし、持家や分譲住宅は依然として弱く、本格的な回復には至っていません。現状は「悪化から横ばいへ」という段階であり、今後の金利動向や住宅需要の変化が住宅市場の方向性を左右することになりそうです。

住宅建設

3.輸出

(1)令和8年7月と令和8年8月の比較

令和8年(2026年)7月と令和8年(2026年)8月の詳細を、以下記載します。

令和8年7月令和8年8月
輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる。

地域別にみると、アジア向けの輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる。

米国及びEU向けの輸出は、持ち直しの動きがみられる。

その他地域向けの輸出は、中東地域向けの輸出の減少により、このところ弱含んでいる。

先行きについては、中東情勢等による下押しリスクに留意する必要がある。
輸出は、持ち直しの動きがみられる。

地域別にみると、アジア、米国及びEU向けの輸出は、持ち直しの動きがみられる。




その他地域向けの輸出は、中東地域向けの輸出の減少により、このところ弱含んでいる。

先行きについては、中東情勢等による下押しリスクに留意する必要がある。
令和8年7月・令和8年8月の輸出を比較:輸出は回復基調が続き、景気下支えの役割を維持

(2)解説

  • 輸出は引き続き持ち直しの動き
  • 8月は全体判断がやや前向きに変化
  • アジア、米国、EU向け輸出が堅調
  • 中東向け輸出は引き続き減少
  • 地域間で強弱が分かれる状況
  • 中東情勢による下振れリスクは継続

①輸出は回復基調を維持

令和8年8月の月例経済報告では、輸出に関する政府の判断は前月から大きく変わっていないものの、表現にはわずかな改善がみられました。世界経済の不透明感が残るなかでも、日本の輸出はアジアや欧米向けを中心に回復傾向を維持しており、国内景気を支える重要な要素となっています。

今回は、令和8年7月と8月の月例経済報告を比較しながら、輸出動向の変化を分かりやすく解説します。

②両月の内容を比較

項目令和8年7月令和8年8月
全体判断このところ持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
アジア向け輸出このところ持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
米国向け輸出持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
EU向け輸出持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
その他地域向け輸出弱含み弱含み
リスク要因中東情勢中東情勢

③全体判断はやや前向きな表現へ

7月の報告では、「輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる」とされていました。

これに対して8月は、「輸出は、持ち直しの動きがみられる」となっています。

一見すると小さな違いですが、「このところ」という表現が削除されたことは、輸出の回復傾向が一時的なものではなく、ある程度定着しつつあるとの認識が背景にあるとも考えられます。

もちろん、劇的な改善ではありません。しかし政府は少なくとも輸出が悪化局面にはなく、回復基調を維持していると判断していることが読み取れます。

④アジア・米国・EU向け輸出は堅調

地域別にみると、主要市場であるアジア、米国、EU向け輸出はいずれも持ち直しが続いています。

主な輸出先の状況

  • アジア向け輸出:回復基調を維持
  • 米国向け輸出:持ち直しが継続
  • EU向け輸出:持ち直しが継続

特にアジア向け輸出は、日本企業のサプライチェーンや製造業の生産活動に大きな影響を与えます。そのため、アジア市場の回復は日本経済にとって重要なプラス材料といえるでしょう。

また、米国やEU向け輸出も底堅く推移しており、自動車、機械、電子部品などの輸出需要が景気を下支えしていることがうかがえます。

⑤中東向け輸出は引き続き課題

一方で、その他地域向け輸出は両月とも弱含みとされています。

その主な要因は、中東向け輸出の減少です。

中東向け輸出の懸念点

  • 地政学リスクの高まり
  • 地域経済の不確実性
  • エネルギー市場の変動
  • 物流や貿易環境への影響

そのため、主要国向け輸出が回復していても、地域によっては依然として厳しい状況が続いています。

⑥先行きは回復期待とリスクの綱引き

先行きについては、7月・8月ともに同じ表現が維持されています。

「中東情勢等による下押しリスクに留意する必要がある」

これは政府が、輸出の基調自体は改善しているとみている一方で、中東情勢の悪化によって輸送コスト上昇や貿易停滞などが生じる可能性を警戒していることを示しています。

世界経済は依然として不透明な部分が多く、地政学的リスクが輸出の回復を妨げる可能性があるため、楽観視はできない状況です。

⑦まとめ

令和8年8月の月例経済報告では、輸出は引き続き「持ち直しの動きがみられる」と評価されました。アジア、米国、EU向け輸出が堅調に推移しており、日本経済を支える重要な役割を果たしています。一方で、中東向け輸出は弱含みが続いており、地政学的リスクへの警戒感も変わっていません。

全体としては、「輸出は回復基調を維持しているが、地域によって明暗が分かれている状態」といえるでしょう。今後は中東情勢の動向と主要国の景気動向が、日本の輸出を左右する重要なポイントとなりそうです。

輸出

4.企業収益

(1)令和8年7月と令和8年8月の比較

令和8年(2026年)7月と令和8年(2026年)8月の詳細を、以下記載します。

令和8年7月令和8年8月
企業収益は、改善の動きがみられるが、中東情勢の影響を注視する必要がある。

「法人企業統計季報」(1-3月期調査)による
と、2026 年1-3月期の経常利益は、前年比14.6%増、前期比4.1%増となった。

業種別にみると、製造業が前年比42.9%増、非製造業が同1.4%増となった。

規模別にみると、大・中堅企業が前年比20.9%増、中小企業が同1.5%増となった。

「日銀短観」( 6 月調査) によると、2026 年度の売上高は、上期は前年比3.4%増、下期は同1.6%増が見込まれている。

経常利益は、上期は前年比6.4%減、下期は同6.6%減が見込まれている。
企業収益は、改善しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある。

上場企業の2026 年4-6月期の決算をみると、経常利益は前年比で製造業、非製造業ともに増益となった。







「日銀短観」( 6 月調査) によると、2026 年度の売上高は、上期は前年比3.4%増、下期は同1.6%増が見込まれている。

経常利益は、上期は前年比6.4%減、下期は同6.6%減が見込まれている。
令和8年7月・令和8年8月の企業収益を比較:企業収益は改善傾向が強まり増益基調を維持

(2)解説

  • 企業収益の判断は「改善の動き」から「改善している」へ上方修正
  • 4~6月期決算では製造業・非製造業とも増益
  • 1~3月期は経常利益が前年比14.6%増
  • 製造業の収益改善が特に顕著
  • 日銀短観では売上増加を予想
  • 中東情勢は引き続きリスク要因

①企業収益は改善傾向が強まる

令和8年8月の月例経済報告では、企業収益に対する政府の評価が一段と前向きな表現へ変更されました。7月は「改善の動きがみられる」とされていましたが、8月には「改善している」と判断されています。

これは、日本企業の業績改善がより明確になったことを示しており、企業部門が引き続き日本経済を支える重要な役割を果たしていることがうかがえます。

②両月の内容を比較

項目令和8年7月令和8年8月
全体判断改善の動きがみられる改善している
収益データ法人企業統計(1~3月期)上場企業決算(4~6月期)
製造業前年比42.9%増益増益
非製造業前年比1.4%増益増益
中東情勢リスク注視が必要注視が必要
日銀短観見通し売上増・利益減予想同左

③政府の評価は「改善している」へ上方修正

7月の表現は、

「企業収益は、改善の動きがみられる」

でした。

一方、8月は

「企業収益は、改善している」

に変更されています。

経済指標の評価において、この表現の変化は決して小さくありません。

「改善の動きがみられる」は回復の兆しを意味しますが、「改善している」は改善傾向がより明確になった状態を示しています。

つまり政府は、企業業績の回復が一時的なものではなく、実際の業績として確認できる段階に入ったと判断していると考えられます。

④7月報告では製造業が大幅な増益

7月報告で取り上げられた法人企業統計によると、2026年1~3月期の経常利益は前年比14.6%増となりました。

1~3月期の経常利益

区分前年比
全産業+14.6%
製造業+42.9%
非製造業+1.4%

特に製造業の42.9%増は非常に高い伸び率です。

主な背景としては、

  • 輸出環境の改善
  • 円安効果による採算改善
  • 自動車や機械関連の好調
  • 原材料価格上昇の一服

などが考えられます。

一方、非製造業も増益を維持していますが、伸び率は限定的であり、業種間の差がみられます。

⑤8月報告では幅広い業種で増益

8月報告では、より新しい4~6月期決算が反映されています。

注目すべき点は、

4~6月期決算のポイント

  • 製造業が増益
  • 非製造業も増益
  • 幅広い業種で収益改善

という点です。

7月時点では、製造業の好調さが目立っていましたが、8月には非製造業についても増益が確認されました。

これは企業収益の改善が一部業種だけでなく、経済全体へ広がりつつあることを示しています。

⑥ただし企業の見通しは慎重

一方で、日銀短観に示された企業自身の見通しはやや慎重です。

2026年度業績見通し

項目上期下期
売上高+3.4%+1.6%
経常利益▲6.4%▲6.6%

企業は売上高の増加を見込んでいるものの、利益については減少を予想しています。

その背景として考えられるのは、

  • 人件費の上昇
  • 原材料価格の変動
  • 資源価格の不透明感
  • 海外経済の減速懸念

などです。

売上は伸びても、コスト増加によって利益が圧迫される可能性を企業自身が警戒していることが分かります。

⑦中東情勢は引き続きリスク

7月・8月ともに共通しているのが、中東情勢への警戒感です。

企業収益は改善しているものの、

  • 原油価格の急変動
  • 海上輸送コストの上昇
  • 地政学リスクの高まり
  • 世界経済への悪影響

などが発生した場合、企業業績に下押し圧力がかかる可能性があります。

そのため、政府は引き続き中東情勢の影響を注視する姿勢を示しています。

⑦まとめ

令和8年8月の月例経済報告では、企業収益の評価が「改善の動きがみられる」から「改善している」へ上方修正されました。1~3月期の法人企業統計では製造業を中心とした大幅増益が確認され、さらに4~6月期決算では製造業・非製造業ともに増益となるなど、企業業績の改善がより鮮明になっています。

もっとも、企業自身は今後の利益見通しを慎重に見ており、中東情勢などの外部環境リスクも残されています。現状の企業収益は総じて堅調ですが、今後はコスト動向や海外経済の変化が企業収益を左右する重要なポイントとなりそうです。

企業収益

5.国内企業物価

(1)令和8年7月と令和8年8月の比較

令和8年(2026年)7月と令和8年(2026年)8月の詳細を、以下記載します。

令和8年7月令和8年8月
国内企業物価は、上昇している。


6月の国内企業物価は、前月比0.4%上昇した。

輸入物価(円ベース)は、上昇している。


企業向けサービス価格の基調を「国際運輸を除くベース」でみると、緩やかに上昇している。
国内企業物価は、このところ上昇テンポが鈍化している。

7月の国内企業物価は、前月比0.0%となった。

輸入物価(円ベース)は、このところ上昇テンポが鈍化している。

企業向けサービス価格の基調を「国際運輸を除くベース」でみると、緩やかに上昇している。
令和8年7月・令和8年8月の国内企業物価を比較:企業物価の上昇は続くが勢いは鈍化

(2)解説

  • 国内企業物価は上昇継続も伸びは鈍化
  • 前月比は0.4%上昇から横ばいへ
  • 輸入物価も上昇テンポが鈍化
  • 円安や資源高の影響が一服
  • 企業向けサービス価格は緩やかに上昇
  • 企業のコスト増加圧力は依然残る

①国内企業物価は上昇ペースが鈍化

令和8年8月の月例経済報告では、国内企業物価に対する政府の見方がやや慎重な表現へと変化しました。7月は「国内企業物価は、上昇している」とされていましたが、8月は「このところ上昇テンポが鈍化している」と評価されています。

企業物価は企業間で取引される商品の価格を示す指標であり、将来の消費者物価にも影響を与える重要な経済指標です。今回の変化は、日本経済におけるインフレ圧力の強さが少しずつ和らいでいる可能性を示しています。

②両月の内容を比較

項目令和8年7月令和8年8月
国内企業物価の判断上昇している上昇テンポが鈍化している
月次変化前月比+0.4%前月比0.0%
輸入物価(円ベース)上昇している上昇テンポが鈍化している
企業向けサービス価格緩やかに上昇緩やかに上昇
基調判断上昇継続上昇継続だが勢いは鈍化

③国内企業物価は「上昇」から「上昇テンポ鈍化」へ

今回の比較で最も重要な変化は、国内企業物価の評価です。

7月は単純に「上昇している」とされていましたが、8月は「上昇テンポが鈍化している」と変更されました。

これは物価が下落したことを意味するのではありません。

むしろ、

  • 価格水準は依然として高い
  • 値上がり自体は継続している
  • ただし上昇の勢いは弱まっている

という状況を示しています。

物価上昇局面が続く中で、そのスピードが落ち着き始めていると考えると分かりやすいでしょう。

④月次データでも鈍化傾向が確認

数値面でも変化がはっきり表れています。

国内企業物価の推移

前月比
6月(7月報告)+0.4%
7月(8月報告)0.0%

6月は前月比0.4%上昇していましたが、7月は横ばいとなりました。

前月比でみると、企業物価の上昇が一旦落ち着いた状態といえます。

特に近年は原材料価格やエネルギー価格の上昇が企業物価を押し上げてきましたが、その影響が徐々に和らいでいる可能性があります。

⑤輸入物価も落ち着く方向へ

輸入物価についても同様の変化が見られます。

輸入物価の評価

  • 7月:「上昇している」
  • 8月:「上昇テンポが鈍化している」

日本はエネルギーや原材料の多くを海外から輸入しています。

そのため輸入物価が上昇すると、

  • 製造コストの増加
  • 物流費の上昇
  • 小売価格への転嫁

といった形で国内物価にも波及します。

8月の評価変更は、企業が受ける輸入コスト上昇圧力が以前よりも弱まっていることを示唆しています。

⑥サービス価格は引き続き上昇

一方で、企業向けサービス価格については両月とも同じ評価が続いています。

「国際運輸を除くベースで緩やかに上昇している」

サービス価格には、

  • 情報サービス
  • 広告
  • 人材派遣
  • コンサルティング
  • 不動産関連サービス

などが含まれます。

モノの価格上昇が落ち着いてきた一方で、人件費上昇などを背景にサービス価格は引き続き上昇していることが分かります。

近年の賃上げの流れを考えると、この傾向は当面続く可能性があります。

⑦インフレの質が変化している可能性

今回の内容から見えてくるのは、インフレの構造変化です。

これまでは、

  • 原油価格上昇
  • 資源価格高騰
  • 円安による輸入コスト増

といった外部要因が物価上昇を主導していました。

しかし足元では、

  • 輸入物価の伸び鈍化
  • 企業物価の横ばい化
  • サービス価格の上昇継続

という状況になっています。

つまり、「モノのインフレ」から「サービスのインフレ」へと重心が移りつつある可能性があります。

⑦まとめ

令和8年8月の月例経済報告では、国内企業物価は依然として高水準を維持しているものの、上昇ペースは鈍化しているとの判断が示されました。前月比では0.4%上昇から横ばいへ変化し、輸入物価についても上昇テンポの鈍化が確認されています。

一方で、企業向けサービス価格は引き続き緩やかに上昇しており、人件費上昇などを背景としたサービスインフレは継続しています。全体としては、「企業物価の上昇局面は続いているが、資源高主導のインフレは落ち着きつつある」と評価できるでしょう。今後は賃金動向やサービス価格の推移が、日本の物価動向を占う重要なポイントとなりそうです。

国内企業物価

6.先行きについて

先行きについては、以下のとおりです。

令和8年7月令和8年8月
先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるものの、中東情勢の影響を注視する必要がある。

また、金融資本市場の変動の影響や米国の通商政策をめぐる動向などに注意する必要がある。
先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるものの、中東情勢や自然災害の影響を注視する必要がある。

また、金融資本市場の変動の影響などに注意する必要がある。
令和8年7月・令和8年8月の先行きの比較:景気回復期待は維持も災害リスクへの警戒強まる

先行きの見通しは維持、リスク要因に変化

令和8年7月と8月の月例経済報告を比較すると、景気の先行きに対する基本的な見方は変わっていません。両月とも、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果によって、日本経済は緩やかな回復を続けることが期待されています。

一方で、景気を取り巻くリスク要因には変化がみられました。

先行き判断の比較

項目令和8年7月令和8年8月
景気の基本見通し緩やかな回復を期待緩やかな回復を期待
注視すべきリスク中東情勢中東情勢・自然災害
注意事項金融市場の変動、米国の通商政策金融市場の変動

7月は、中東情勢に加えて「米国の通商政策」を巡る動向がリスクとして明記されていました。関税政策や貿易摩擦の動向は、日本の輸出や企業活動に大きな影響を与えるため、政府は慎重な姿勢を示していました。

これに対し8月は、「米国の通商政策」が記述から外れ、新たに「自然災害」が加えられています。近年は豪雨や台風、地震などによる被害が経済活動へ及ぼす影響も大きくなっており、政府の関心が海外要因だけでなく国内リスクにも広がったことがうかがえます。

また、両月とも金融資本市場の変動には注意が必要とされており、株価や為替相場、金利動向が企業収益や消費活動に与える影響への警戒感は継続しています。

総じてみると、政府は「景気は緩やかな回復基調を維持する」との見方を変えていません。しかし、その回復を妨げるリスクとして、8月は中東情勢に加え自然災害への警戒を強めており、国内外の不確実性を引き続き注視している状況といえるでしょう。


7.まとめ

令和8年7月と8月の月例経済報告における先行きの見通しを比較すると、日本経済に対する政府の基本認識は引き続き前向きであることが分かります。雇用情勢の改善や賃金上昇を背景とした所得環境の好転に加え、各種経済政策の効果が景気を下支えし、今後も緩やかな回復が続くことが期待されています。実際に企業収益や設備投資、個人消費などに持ち直しの動きが見られており、回復基調そのものは維持されていると考えられます。

しかし、その一方で政府は景気回復を阻害する可能性のあるリスク要因への警戒も強めています。7月は中東情勢や米国の通商政策が主な懸念材料として挙げられていましたが、8月には米国の通商政策への言及がなくなり、新たに自然災害がリスク要因として加わりました。これは近年、豪雨や台風、地震などが企業活動や消費行動、物流網に与える影響が大きくなっていることを反映したものと考えられます。

また、両月を通じて金融資本市場の変動には注意が必要とされており、株価や為替、金利の急変が企業活動や家計に与える影響も無視できません。総じてみると、景気の回復期待は維持されているものの、その持続性を左右するリスクは多様化しています。今後は海外情勢だけでなく、国内の自然災害や金融市場の動向にも注目しながら、日本経済の行方を見守る必要があるでしょう。

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