月例経済報告 令和8年(2026年)6月 個人消費は改善、輸出は持ち直しへ
内閣府が公表する月例経済報告は、日本経済の現状と今後の方向性を知るうえで重要な資料です。
令和8年6月の月例経済報告では、景気の基調判断に大きな変更はなかったものの、「個人消費」「輸出」「倒産件数」の3項目について表現の変化が見られました。
特に個人消費では消費者マインドの改善兆候が示され、輸出は横ばいから持ち直しへと評価が引き上げられています。
一方で、中東情勢によるリスクや企業経営を取り巻く厳しい環境への警戒感は依然として残っています。
本記事では、令和8年5月と6月の月例経済報告を比較しながら、変更点の背景と日本経済への影響について分かりやすく解説します。
この記事を読んで分かること
- 個人消費の最新評価と改善点
- 消費者マインドの変化
- 輸出判断が上方修正された理由
- アジア・米国向け輸出の動向
- 倒産件数減少の意味
- 今後の景気リスク要因

1.令和8年6月分について
| 令和8年5月 | 令和8年6月 | |
| 基調判断 | 景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある | 景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある |
| 個人消費 | 持ち直しの動きがみられる。ただし、消費者マインドがこのところ弱い動きとなっていることに注意が必要である。 | 持ち直しの動きがみられる。 |
| 設備投資 | 持ち直している | 持ち直している |
| 住宅建設 | 弱含んでいる | 弱含んでいる |
| 公共投資 | 堅調に推移している | 堅調に推移している |
| 輸出 | おおむね横ばいとなっている | このところ持ち直しの動きがみられる |
| 輸入 | おおむね横ばいとなっている | おおむね横ばいとなっている |
| 貿易・サービス収支 | おおむね均衡している | おおむね均衡している |
| 生産 | 横ばいとなっている | 横ばいとなっている |
| 企業収益 | 改善の動きがみられるが、中東情勢の影響を注視する必要がある | 改善の動きがみられるが、中東情勢の影響を注視する必要がある |
| 業況判断 | おおむね横ばいとなっている。ただし、先行きについてはやや慎重な見方となっており、中東情勢の影響を注視する必要がある。 | おおむね横ばいとなっている。ただし、先行きについてはやや慎重な見方となっており、中東情勢の影響を注視する必要がある。 |
| 倒産件数 | 増加がみられる | おおむね横ばいとなっている |
| 雇用情勢 | 改善の動きがみられる | 改善の動きがみられる |
| 国内企業物価 | このところ上昇している | このところ上昇している |
| 消費者物価 | 緩やかに上昇している | 緩やかに上昇している |
個人消費、輸出、倒産件数の表記に変化がある。
今月、記述に変化が見られたのは、個人消費、輸出、倒産件数の4項目です。
変化のあった項目数は、今月も先月と同様、3項目となりました。
以下、記述に変化のありました個人消費、輸出と倒産件数について詳しくみていきます。

2.個人消費
(1)令和8年5月と令和8年6月の比較
令和8年(2026年)5月と令和8年(2026年)6月の詳細を、以下記載します。
| 令和8年5月 | 令和8年6月 |
| 「四半期別GDP速報」( 2026 年1-3月期1次速報)では、民間最終消費支出の実質値は前期比0.3%増となった。 また、「消費動向指数(CTI)」(3月)では、総消費動向指数(CTIマクロ)の実質値は前月比0.0%増となった。 個別の指標について、需要側の統計をみると、「消費動向指数(CTI)」(3月)では、世帯消費動向指数(CTIミクロ、総世帯)の実質値は前月比0.5%減となった。 供給側の統計をみると、「商業動態統計」(3月)では、小売業販売額は前月比1.0%増となった。 消費動向の背景をみると、実質総雇用者所得は、このところ緩やかに増加している。 また、消費者マインドは、このところ弱い動きとなっている。 さらに、足元の状況について、ヒアリング結果等を踏まえると、新車販売台数は、自動車税環境性能割の廃止もある中で、このところ持ち直しの動きがみられる。 家電販売は、緩やかに増加している。 旅行は、このところ弱含んでいる。 外食は、緩やかに増加している。 こうしたことを踏まえると、個人消費は、持ち直しの動きがみられる。 ただし、消費者マインドがこのところ弱い動きとなっていることに注意が必要である。 先行きについては、雇用・所得環境の改善が持ち直しの動きを支えることが期待されるが、消費者マインドが足元で弱い動きとなっている点に注意が必要である。 | 「四半期別GDP速報」(2026 年1-3月期2次速報)では、民間最終消費支出の実質値は前期比0.3%増となった。 また、「消費動向指数(CTI)」(4月)では、総消費動向指数(CTIマクロ)の実質値は前月比0.2%増となった。 個別の指標について、需要側の統計をみると、「消費動向指数(CTI)」(4月)では、世帯消費動向指数(CTIミクロ、総世帯)の実質値は前月比1.5%増となった。 供給側の統計をみると、「商業動態統計」(4月)では、小売業販売額は前月比2.1%増となった。 消費動向の背景をみると、実質総雇用者所得は、緩やかに増加している。 また、消費者マインドは、下げ止まりの兆しがみられる。 さらに、足元の状況について、ヒアリング結果等を踏まえると、新車販売台数は、自動車税環境性能割の廃止もある中で、このところ持ち直しの動きがみられる。 家電販売は、このところ増加している。 旅行は、弱含んでいる。 外食は、緩やかに増加している。 こうしたことを踏まえると、個人消費は、持ち直しの動きがみられる。 先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される。 ただし、消費者マインドの動向に留意する必要がある。 |
(2)解説
- 5月・6月とも個人消費は「持ち直し」
- GDP個人消費は前期比0.3%増で同じ
- 6月はCTI・小売販売が改善
- 消費者マインドに下げ止まりの兆し
- 家電販売は判断が上向き
- 旅行は弱含みが続く
①個人消費は「持ち直し」を維持
令和8年5月と6月の月例経済報告を比較すると、個人消費に対する政府の基本的な判断は、両月とも 「持ち直しの動きがみられる」 で変わっていません。
ただし、内容を細かく見ると、6月は5月よりもやや前向きな印象です。特に、消費者マインドについて、5月は「弱い動き」とされていたのに対し、6月は「下げ止まりの兆し」と表現されています。つまり、消費者の節約志向や将来不安が完全に解消されたわけではないものの、悪化が続く局面からは少し抜け出しつつある、という見方ができます。
②GDP個人消費は安定している
GDP統計を見ると、民間最終消費支出の実質値は、5月時点の1次速報でも、6月時点の2次速報でも 前期比0.3%増 でした。
これは、2026年1-3月期の個人消費が、少なくとも大きく崩れてはいないことを示しています。もちろん、0.3%増という数字は力強い伸びとまでは言えません。しかし、物価上昇が続く中で、実質ベースの消費がプラスを維持している点は評価できます。
つまり、家計は節約意識を持ちながらも、必要な支出や一部の選択的な支出を続けていると考えられます。
③消費者マインドの表現が大きなポイント
今回の比較で最も重要なのは、消費者マインドに関する表現の変化です。
| 月 | 消費者マインドの表現 |
|---|---|
| 5月 | このところ弱い動きとなっている |
| 6月 | 下げ止まりの兆しがみられる |
5月の「弱い動き」という表現は、消費者が先行きに慎重になっていることを示しています。物価高、将来の収入不安、生活費の上昇などを背景に、「買いたいけれど控える」という心理があったと考えられます。
一方、6月の「下げ止まりの兆し」は、まだ強い改善ではありませんが、これ以上悪くなる状況ではなくなりつつある、という意味合いです。
そのため、6月の報告は、個人消費について 「回復の勢いはまだ限定的だが、心理面の悪化には歯止めがかかり始めた」 と読むことができます。
④品目別では家電が改善、旅行は弱い
足元の消費動向を見ると、分野ごとに濃淡があります。
| 分野 | 5月 | 6月 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 新車販売 | 持ち直しの動き | 持ち直しの動き | 横ばい |
| 家電販売 | 緩やかに増加 | このところ増加 | やや改善 |
| 旅行 | このところ弱含み | 弱含み | 弱さが継続 |
| 外食 | 緩やかに増加 | 緩やかに増加 | 安定 |
新車販売は、自動車税環境性能割の廃止もある中で、両月とも持ち直しの動きが続いています。
家電販売については、5月の「緩やかに増加」から、6月は「このところ増加」へと表現が変わりました。大きな上方修正とまでは言えませんが、家電需要がややしっかりしてきた印象があります。
一方で、旅行は5月・6月とも弱含みです。外食は緩やかに増加しているため、サービス消費全体が悪いわけではありませんが、旅行については価格上昇や家計の節約志向が影響している可能性があります。
⑤雇用・所得環境は個人消費を下支え
個人消費を支える最大の要素は、やはり所得です。
5月は「実質総雇用者所得は、このところ緩やかに増加している」とされ、6月も「緩やかに増加している」と記述されています。表現はほぼ同じですが、実質ベースで所得が増えていることは、物価上昇下の消費にとって重要です。
家計にとっては、名目賃金が増えても、それ以上に物価が上がれば生活は楽になりません。したがって、実質所得が緩やかに増えているという点は、今後の消費回復を支える材料になります。
6月の先行き判断でも、5月の「雇用・所得環境の改善が持ち直しの動きを支えることが期待される」から、6月は「雇用・所得環境が改善する下で、持ち直していくことが期待される」へと変化しています。表現としては、6月の方がやや自然に回復を見込む書き方になっています。
⑥ただし、消費者心理にはなお注意が必要
6月は消費者マインドに下げ止まりの兆しが見られるとされていますが、報告の最後では、なお 「消費者マインドの動向に留意する必要がある」 とされています。
これは、政府が消費者心理の改善を確認しつつも、まだ安心できる段階ではないと見ていることを示しています。
特に注意すべき点は次のとおりです。
- 物価上昇による家計負担
- 実質賃金の持続性
- 食料品・光熱費など生活必需品の価格
- 旅行など選択的支出の弱さ
- 将来不安による節約志向
つまり、個人消費は持ち直しているものの、家計が積極的に支出を増やしているというより、所得環境の改善に支えられて、何とか回復方向を維持している段階といえます。
⑦まとめ
令和8年5月と6月の月例経済報告を比較すると、個人消費の総括判断はどちらも 「持ち直しの動きがみられる」 で変わりません。
しかし、内容面では6月の方が改善しています。CTIマクロは0.0%増から0.2%増へ、CTIミクロは0.5%減から1.5%増へ、小売業販売額も1.0%増から2.1%増へ伸びました。さらに、消費者マインドも「弱い動き」から「下げ止まりの兆し」へと表現が変わっています。
したがって、6月の個人消費は、5月に比べて 「回復の土台が少ししっかりしてきた」 と評価できます。
ただし、旅行は弱含みが続き、消費者マインドにもなお注意が必要です。今後は、雇用・所得環境の改善が続き、家計が物価高への不安を和らげられるかどうかが、個人消費の本格回復を左右するポイントになるでしょう。

3.輸出
(1)令和8年5月と令和8年6月の比較
令和8年(2026年)5月と令和8年(2026年)6月の詳細になります。
| 令和8年5月 | 令和8年6月 |
| 輸出は、おおむね横ばいとなっている。 地域別にみると、アジア向けの輸出は、おおむね横ばいとなっている。 米国向けの輸出は、持ち直しの動きがみられる。 EU向けの輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる。 その他地域向けの輸出は、中東地域向けの輸出は減少しているものの、総じてみればおおむね横ばいとなっている。 先行きについては、中東情勢等による下押しリスクに留意する必要がある。 | 輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる。 地域別にみると、アジア及びEU向けの輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる。 米国向けの輸出は、持ち直しの動きがみられる。 その他地域向けの輸出は、中東地域向けの輸出の減少により、このところ弱含んでいる。 先行きについては、中東情勢等による下押しリスクに留意する必要がある。 |
(2)解説
- 輸出全体は「横ばい」から「持ち直し」へ改善
- アジア向け輸出が回復に転じた
- EU向け輸出も持ち直し基調を維持
- 米国向け輸出は引き続き堅調
- 中東向け輸出は減少が続く
- 輸出回復が日本経済を下支えする展開
①輸出は「横ばい」から「持ち直し」へ前進
令和8年5月と6月の月例経済報告を比較すると、輸出に関する政府の見方は明らかに改善しています。
5月の評価は
「輸出は、おおむね横ばいとなっている」
でした。
これに対し、6月の評価は
「輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる」
へと上方修正されています。
これは単なる表現の違いではありません。政府が、日本の輸出が停滞局面から徐々に回復局面へ移りつつあると判断したことを意味しています。
もっとも、地域ごとにみると状況は一様ではありません。アジアやEU向けは改善が見られる一方で、中東向け輸出には依然として弱さが残っています。今回は、その内容を詳しくみていきましょう。
アジア向け輸出の改善が大きなポイント
今回の比較で最も注目すべき点は、アジア向け輸出の評価変更です。
5月
- アジア向け輸出はおおむね横ばい
6月
- アジア向け輸出は持ち直しの動き
という変化が見られます。
アジアは日本企業にとって最大の輸出先です。
輸出品目としては
- 半導体製造装置
- 電子部品
- 工作機械
- 自動車部品
- 化学製品
などが中心となっています。
アジア向け輸出が回復しているということは、中国やASEAN諸国を中心に、生産活動や設備投資が一定程度持ち直している可能性を示しています。
輸出全体の判断が改善した背景には、このアジア向け輸出の回復が大きく寄与していると考えられます。
②米国向け輸出は引き続き底堅い
米国向け輸出については、5月も6月も
「持ち直しの動きがみられる」
という判断が維持されています。
つまり、政府は既に5月時点で米国向け輸出を比較的好調と評価しており、その流れが6月も続いていることになります。
米国は世界最大の消費市場であり、日本にとって重要な輸出先です。
特に、
- 自動車
- 自動車部品
- 機械類
- 電気機器
などが輸出の中心です。
今回の月例経済報告を見る限り、米国向け輸出は輸出全体の回復を下支えしている存在といえるでしょう。
③EU向け輸出も改善基調を維持
EU向け輸出も引き続き堅調です。
5月
- このところ持ち直しの動きがみられる
6月
- このところ持ち直しの動きがみられる
判断は変わっていません。
ただし、6月ではアジア向けとEU向けをまとめて
「アジア及びEU向けの輸出は、このところ持ち直しの動きがみられる」
と整理されています。
これはEU向け輸出の回復が継続していると政府が判断していることを示しています。
世界経済の不透明感が続く中でも、欧州向け輸出は比較的安定した動きを見せているといえそうです。
④中東向け輸出は依然として懸念材料
一方で、弱い動きが見られるのが中東向け輸出です。
5月
- 中東向け輸出は減少
- その他地域全体では横ばい
6月
- 中東向け輸出の減少により
- その他地域全体が弱含み
5月は中東向けが減少していても、その他地域全体では横ばいを維持していました。
しかし6月になると、
中東向け輸出の減少が全体の重荷になり、「弱含み」と評価される
ようになっています。
つまり、中東向け輸出の不振が以前より強く意識されるようになったということです。
⑤中東情勢が最大のリスク要因
5月と6月で共通している点もあります。
それは先行きのリスクとして、
「中東情勢等による下押しリスクに留意する必要がある」
という表現が維持されていることです。
中東情勢が悪化すると、
- 原油価格の上昇
- 海上輸送コストの上昇
- サプライチェーンの混乱
- 世界景気の減速
などにつながる可能性があります。
輸出企業にとっては、
- 輸送費の増加
- 原材料価格の上昇
- 海外需要の減少
といった形で影響が及ぶ恐れがあります。
そのため、輸出が改善しているとはいえ、政府は依然として慎重な姿勢を崩していません。
⑥輸出から見える日本経済の姿
今回の月例経済報告から読み取れるポイントを整理すると次のようになります。
明るい材料
- 輸出全体が横ばいから持ち直しへ改善
- アジア向け輸出が回復
- 米国向け輸出が堅調
- EU向け輸出も安定
注意点
- 中東向け輸出は減少継続
- その他地域向け輸出は弱含み
- 地政学リスクは依然大きい
つまり、日本経済の外需は総じて改善方向に向かっていますが、その回復力はまだ盤石ではないという状況です。
⑥まとめ
令和8年6月の月例経済報告では、輸出の判断が「おおむね横ばい」から「このところ持ち直しの動きがみられる」へと上方修正されました。
特にアジア向け輸出が横ばいから持ち直しへ改善したことが大きく、米国向け・EU向け輸出も引き続き底堅く推移しています。
その結果、日本の輸出全体は回復局面に入りつつあるとの見方が強まっています。
一方で、中東向け輸出は減少が続いており、その他地域向け輸出は弱含みとなりました。また、中東情勢による下押しリスクも依然として残っています。
総じてみると、6月の輸出は5月よりも明るい内容となりましたが、世界経済や地政学リスクの影響を受けやすい状況に変わりはありません。今後はアジア向け輸出の回復が継続するかどうかが、日本経済全体の成長を占う重要なポイントになるでしょう。

4.倒産件数
(1)令和8年5月と令和8年6月の比較
令和8年(2026年)5月と令和8年(2026年)6月の詳細になります。
| 令和8年5月 | 令和8年6月 |
| 倒産件数は、増加がみられる。 3月は924 件の後、4月は883件となった。 負債総額は、3月は1,148 億円の後、4月は1,118億円となった。 | 倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。 4月は883 件の後、5月は780 件となった。 負債総額は、4月は1,118 億円の後、5 月は1,211 億円となった。 |
(2)解説
- 倒産件数の評価は「増加」から「横ばい」へ改善
- 件数は883件から780件へ大幅減少
- 倒産件数は減少したが負債総額は増加
- 中小企業中心の倒産が減少した可能性
- 大型倒産の発生で負債総額は膨らむ
- 企業経営環境にはなお注意が必要
倒産件数は「増加」から「横ばい」へ改善
令和8年5月と6月の月例経済報告を比較すると、倒産に対する政府の見方はやや改善しています。
5月の報告では、
「倒産件数は、増加がみられる」
とされていました。
一方、6月の報告では、
「倒産件数は、おおむね横ばいとなっている」
へと修正されています。
倒産件数そのものを見ても、4月の883件から5月は780件へ減少しています。
つまり、企業倒産が増え続ける状況からは一旦落ち着きつつあると政府は判断したと考えられます。
ただし、注意したいのは負債総額です。倒産件数は減少したにもかかわらず、負債総額は増加しており、企業経営を取り巻く環境が全面的に改善したとは言えません。
倒産件数が減少した背景
倒産件数が減少した理由として考えられる要因は複数あります。
企業を支える環境
- 雇用情勢の改善
- 個人消費の持ち直し
- 輸出の回復傾向
- 設備投資の底堅さ
月例経済報告全体を見ると、令和8年6月時点の景気判断は「緩やかに回復している」が維持されています。
企業経営にとって重要な売上環境が改善しつつあることが、倒産件数の減少につながった可能性があります。
また、賃上げの広がりや設備投資の持ち直しなども、企業活動を後押しする要因になっていると考えられます。
しかし負債総額は増加している
今回の比較で見逃せないのが負債総額の動きです。
| 月 | 負債総額 |
|---|---|
| 3月 | 1,148億円 |
| 4月 | 1,118億円 |
| 5月 | 1,211億円 |
倒産件数は減少しているにもかかわらず、負債総額は5月に1,211億円まで増加しました。
これは、
「倒産する企業の数は減ったが、規模の大きな倒産が含まれていた」
可能性を示しています。
倒産統計ではよく見られる現象ですが、
- 件数は少ない
- しかし大型倒産が発生する
という場合、負債総額は大きく増加します。
逆に、
- 倒産件数は多い
- ただし小規模企業が中心
の場合は、負債総額はあまり膨らみません。
そのため、倒産件数だけを見て安心することはできません。
「増加」から「横ばい」へ変わった意味
月例経済報告では、文章表現の変更には大きな意味があります。
今回の変化を整理すると、
| 5月 | 6月 |
|---|---|
| 増加がみられる | おおむね横ばい |
となっています。
「増加がみられる」という表現は、政府が倒産の増加傾向を認識している状態です。
一方で「おおむね横ばい」は、
- 悪化はしていない
- かといって大きく改善もしていない
という意味になります。
つまり、
倒産増加局面はいったん落ち着いたが、楽観できる状況ではない
というのが政府の認識と考えられます。
中小企業には依然として厳しい環境
倒産件数が減少したとはいえ、多くの中小企業は依然として厳しい経営環境に置かれています。
代表的な課題としては、
中小企業の経営課題
- 人手不足
- 人件費上昇
- 原材料価格の高止まり
- エネルギーコストの負担
- 金利上昇への警戒感
などが挙げられます。
特に近年は、
「売上は増えているが利益が残らない」
という企業も少なくありません。
価格転嫁が十分できていない企業では、売上増加だけでは経営改善につながらないケースもあります。
今後の注目ポイント
今後の倒産動向を見る上では、次のポイントに注目したいところです。
注目点
- 実質賃金の改善
- 個人消費の持ち直し
- 輸出回復の継続
- 中小企業の価格転嫁
- 日銀の金融政策
- 金利動向
これらが改善すれば、倒産件数はさらに減少する可能性があります。
反対に、
- 景気減速
- 消費者マインド悪化
- 原材料価格の上昇
などが起きれば、再び倒産件数が増加する可能性もあります。
まとめ
令和8年5月と6月の月例経済報告を比較すると、倒産件数に対する政府の見方は「増加がみられる」から「おおむね横ばい」へ改善しました。
実際の倒産件数も883件から780件へ減少しており、倒産増加の勢いには一定の落ち着きがみられます。
一方で、負債総額は1,118億円から1,211億円へ増加しており、件数は減っても大型倒産の影響が残っている可能性があります。
そのため、今回の結果は「企業倒産が大きく改善した」と評価するよりも、
「倒産増加の流れはいったん一服したが、企業経営を取り巻く環境にはなお注意が必要な状況」
と理解するのが適切でしょう。今後は景気回復の広がりが中小企業にまで波及するかどうかが、倒産動向を左右する重要なポイントになりそうです。

2.先行きについて
先行きについては、以下のとおりです。
| 令和8年5月 | 令和8年6月 |
| 先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるものの、中東情勢の影響を注視する必要がある。 また、金融資本市場の変動の影響や米国の通商政策をめぐる動向などに注意する必要がある。 | 先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるものの、中東情勢の影響を注視する必要がある。 また、金融資本市場の変動の影響や米国の通商政策をめぐる動向などに注意する必要がある。 |
令和8年6月の記載は、前月令和8年5月と同内容になっており、記載に変化はありません。
3.まとめ
令和8年6月の月例経済報告では、景気の基調判断こそ前月から据え置かれましたが、個人消費、輸出、倒産件数の3項目において前向きな変化が確認されました。
個人消費は引き続き「持ち直しの動きがみられる」と評価される中、消費者マインドについては「弱い動き」から「下げ止まりの兆し」へと表現が改善しました。家計の節約志向は依然として残るものの、実質所得の増加や小売販売の改善が消費を下支えしている状況です。
また、輸出については「おおむね横ばい」から「持ち直しの動きがみられる」へと上方修正されました。特にアジア向け輸出の改善が目立ち、米国向けやEU向けも堅調に推移しています。日本経済を支える外需に回復の兆しが見え始めた点は明るい材料といえるでしょう。
一方、倒産件数は883件から780件へ減少し、評価も「増加」から「おおむね横ばい」へ改善しました。ただし、負債総額は増加しており、大型倒産の影響や中小企業を取り巻く厳しい経営環境には引き続き注意が必要です。
総じてみると、日本経済は緩やかな回復基調を維持しながら、その内容が少しずつ改善していることがうかがえます。しかし、中東情勢や物価上昇などのリスク要因は残されており、今後も雇用・所得環境の改善が継続するか、輸出回復が本格化するかが景気の行方を左右する重要なポイントになるでしょう。