月例経済報告 令和8年(2026年)3月 ー物価は落ち着く?月例経済報告から見る動きー

月例経済報告 令和8年(2026年)3月 ー物価は落ち着く?月例経済報告から見る動きー

内閣府が公表した令和8年3月分の月例経済報告では、消費者物価の基調について「このところ緩やかに上昇している」との評価が示されました。
前月である令和8年2月分では、「上昇テンポが緩やかになっている」とされており、同じ“上昇”という評価を維持しながらも、物価の動きをより慎重に見極めようとする姿勢が続いています。
実際、前月比や前年比の数値を見ると、上昇率は総じて小幅にとどまり、コア物価(生鮮食品を除く総合)では横ばいないし下落といった動きも見られます。

こうした状況を踏まえると、現在の物価動向は、急激な上昇局面ではなく、「上昇を続けながらも勢いは落ち着いてきている段階」と捉えることができます。
一方で、家計の物価見通しを示す消費動向調査を見ると、高い物価上昇を予想する世帯の割合は縮小しており、消費者のインフレ警戒感にも変化が生じています。

本記事では、令和8年2月分と令和8年3月分の月例経済報告における消費者物価の記述を比較しながら、数値の変化だけでなく、表現の違いが示す意味を丁寧に読み解いていきます。
物価の基調がどのように評価され、先行きはどのように見通されているのかを、分かりやすく整理します。

この記事を読んで分かること

  • 月→3月で景気判断は回復維持、注視点が変化
  • 米通商政策に加え、中東情勢が新たなリスクに
  • 物価は上昇継続も、上昇率は小幅で勢い弱め
  • コア物価は横ばいで、前月比は下落が続く
  • 家計の物価予想は高インフレ警戒が後退
  • 先行きは緩やかな回復と上昇見込みを継続
解説

1.令和8年3月分について

(1)主要な項目

主要な項目を、令和8年2月令和8年3月について、以下掲載します。

令和8年2月令和8年3月
基調判断景気は、米国の通商政策の影響が残るものの、緩やかに回復している景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある
個人消費持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
設備投資緩やかに持ち直している緩やかに持ち直している
住宅建設弱含んでいる弱含んでいる
公共投資底堅く推移している底堅く推移している
輸出おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
輸入おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
貿易・サービス収支おおむね均衡しているおおむね均衡している
生産横ばいとなっている横ばいとなっている
企業収益米国の通商政策の影響が残るものの、改善の動きがみられる米国の通商政策の影響が残るものの、改善の動きがみられる
業況判断おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
倒産件数増加がみられる増加がみられる
雇用情勢改善の動きがみられる改善の動きがみられる
国内企業物価緩やかに上昇している緩やかに上昇している
消費者物価このところ上昇テンポが緩やかになっているこのところ緩やかに上昇している
月例経済報告 令和8年2月、令和8年3月の比較。
基調判断・消費者物価の表記に変化がある。

今月は、表記に変化が見られたのは、基調判断と消費者物価の2項目です。
変化のあった項目数は、先月と同様、2項目となりました。
以下、記述に変化のありました基調判断と消費者物価について詳しくみていきます。

徹底解説

(2)基調判断

①令和8年2月と令和8年3月の比較

令和8年(2026年)2月と令和8年(2026年)3月の詳細を、以下記載します。

令和8年2月令和8年3月
景気は、米国の通商政策の影響が残るものの、緩やかに回復している。

先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待される。


ただし、今後の物価動向や米国の通商政策をめぐる動向などの景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

また、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意する必要がある。
景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある。

先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるものの、中東情勢の影響を注視する必要がある。





また、金融資本市場の変動の影響や米国の通商政策をめぐる動向などに注意する必要がある。
令和8年2月・令和8年3月の基調判断を比較:回復維持も、中東情勢を新たに警戒。

②解説

  • 両月とも景気は「緩やかに回復」と評価している
  • 2月は米国の通商政策の影響を前面に示している
  • 3月は中東情勢の影響を新たに注視している
  • 先行きは雇用・所得改善と政策効果に期待している
  • 下振れリスクは物価・通商政策・市場変動に注意
  • 3月はリスクが多面的になっている

令和8年2月と令和8年3月の月例経済報告を「基調判断」の観点から比較すると、景気の現状認識は共通して「緩やかな回復」を維持している一方で、先行きに対する注意点、すなわち下振れリスクの置き方に変化が見られます。
言い換えると、回復の骨格は同じでも、警戒すべき外部要因の“並べ方”が3月にアップデートされています。

まず現状判断について、2月は「米国の通商政策の影響が残るものの、緩やかに回復している」と記述されています。
ここでは、回復基調を認めつつも、米国の通商政策が企業活動や輸出関連産業(特に自動車産業など)に影響しうる点を、景気判断の一部として織り込んでいます。
「影響が残るものの」という言い回しは、マイナス材料が完全には消えていないが、全体としては回復を妨げ切れていない、というニュアンスを持ちます。
つまり2月は、回復の評価を維持しながら、外部環境として米国要因を強く意識した判断になっています。

これに対して3月は、「景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」とされています。
2月のように米国通商政策を現状判断の主語の近くに置くのではなく、3月は中東情勢という地政学的リスクを前面に出している点が特徴です。
「回復しているが…注視が必要」という構文は、足元の回復を認めつつも、外部要因の変化次第で景気の見通しがぶれ得る、という警戒感をより明確に示します。
ここから、3月時点では、米国要因に加えて中東情勢も景気を左右し得る材料として重みを増した、と読み取れます。

次に先行き判断を比較します。2月は「雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待される」と、回復継続の支えとして国内要因(雇用・所得、政策効果)を挙げています。
その上で「今後の物価動向や米国の通商政策をめぐる動向などの景気を下押しするリスクに留意」、「金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意」と続きます。
つまり、期待(支え)→注意(下押し要因)という構成で、リスクの中心には物価と米国通商政策、そして市場変動が置かれています。

一方3月の先行きは、回復を支える要因として雇用・所得改善と政策効果を同様に挙げながらも、「中東情勢の影響を注視する必要がある」と明示し、そのうえで「金融資本市場の変動の影響や米国の通商政策をめぐる動向などに注意」と続きます。
ここで重要なのは、リスクの“追加”というより、リスクの“多層化”です。
2月は米国通商政策と物価・市場変動が主軸でしたが、3月はそこに中東情勢が加わり、警戒対象がより広がった構図になっています。

以上をまとめると、2月から3月にかけて基調判断の「回復」評価は維持される一方、リスク認識が米国通商政策中心から、地政学(中東)も含む多面的な警戒へと変化しています。
これは、国内の雇用・所得や政策効果が回復を下支えするという基本線は変えずに、外部環境の不確実性をより強く意識し始めたことを示しています。
今後の読み方としては、回復を支える国内要因がどこまで持続するかに加え、米国通商政策や中東情勢が、物価・貿易・市場を通じて景気にどう波及するかをセットで点検することが重要になります。

中東情勢

(3)消費者物価

①令和8年2月と令和8年3月の比較

令和8年(2026年)2月と令和8年(2026年)3月の詳細になります。

令和8年2月令和8年3月
消費者物価の基調を「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」でみると、このところ上昇テンポが緩やかになっている。

1月は、前月比では連鎖基準、固定基準ともに0.1%上昇した。

前年比では連鎖基準で2.5%上昇し、固定基準で2.6%上昇した。

「生鮮食品を除く総合」(いわゆる「コア」)は、このところ横ばいとなっている。

1月は、前月比では連鎖基準、固定基準ともに0.1%下落した。

なお、1月の「総合」は、前月比では連鎖基準、固定基準ともに0.2%下落した。

物価の上昇を予想する世帯の割合を「消費動向調査」(二人以上の世帯)でみると、1月は、1年後の予想物価上昇率別に、2%未満が12.2%(前月11.7%)、2%以上から5%未満が35.4%(前月35.2%)、5%以上から10%未満が26.7%(前月7.5%)、10%以上が17.0%(前月17.4%)となった。

先行きについては、消費者物価(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は、当面、緩やかに上昇していくことが見込まれる。
消費者物価の基調を「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」でみると、このところ緩やかに上昇している。

2月は、前月比では連鎖基準、固定基準ともに0.1%上昇した。

前年比では連鎖基準で2.4%上昇し、固定基準で2.5%上昇した。

「生鮮食品を除く総合」(いわゆる「コア」)は、このところ横ばいとなっている。

2月は、前月比では連鎖基準で0.4%下落し、固定基準で0.3%下落した。

なお、2月の「総合」は、前月比では連鎖基準、固定基準ともに0.2%下落した。

物価の上昇を予想する世帯の割合を「消費動向調査」(二人以上の世帯)でみると、2月は、1年後の予想物価上昇率別に、2%未満が14.2%(前月12.2%)、2%以上から5%未満が34.9%(前月35.4%)、5%以上から10%未満が22.2%(前月26.7%)、10%以上が14.3%(前月17.0%)となった。

先行きについては、消費者物価(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は、当面、緩やかに上昇していくことが見込まれる。
令和8年2月・令和8年3月の消費者物価を比較:|物価は上昇継続も、勢いは弱含み

②解説

  • 2月は物価上昇テンポの鈍化が強く意識された
  • 3月は基調判断が「緩やかに上昇」へとやや前向きに修正された
  • コア物価は両月とも横ばいで、前月比では下落が続いている
  • 前年比の上昇率は2月から3月にかけて小幅に低下した
  • 家計の物価見通しでは高インフレ予想層が縮小している
  • 先行きは両月とも緩やかな上昇が見込まれている

令和8年2月および令和8年3月の月例経済報告における消費者物価の記述を比較すると、物価の基調は引き続き上昇方向にあるものの、その上昇テンポや評価のトーンには違いが見られます。
特に「生鮮食品及びエネルギーを除く総合(いわゆるコアコア)」の表現が、2月から3月にかけて微妙に変化しており、物価動向を慎重に見極めようとする姿勢がうかがえます。

まず、令和8年2月の記述では、消費者物価の基調について「このところ上昇テンポが緩やかになっている」とされています。
1月の数値を見ると、前月比では0.1%上昇とプラスを維持しているものの、前年比では連鎖基準で2.5%、固定基準で2.6%と、これまでと比べると上昇率はやや低下しています。
この点から、物価水準は上がっているものの、値上げの広がりやスピードが一服している局面であると評価されています。

また、「生鮮食品を除く総合(コア)」については、「このところ横ばい」とされており、1月の前月比では0.1%下落しています。
さらに「総合指数」も前月比で0.2%下落しており、短期的には下押し圧力がかかっている状況が示されています。エネルギーや一部品目の価格動向、季節要因などが影響している可能性が考えられます。

一方、令和8年3月の記述を見ると、基調判断は「このところ緩やかに上昇している」と表現がやや前向きに修正されています。
2月の数値では、前月比が0.1%上昇と2月分と同水準であるものの、基調としては再び上向きを確認した形です。
ただし、前年比は2.4%(連鎖基準)、2.5%(固定基準)と、2月からさらに小幅に低下しており、中期的には物価上昇率が鈍化傾向にあることも読み取れます。

コア物価については、3月も「このところ横ばい」と評価され、2月の前月比では0.4%下落と、下落幅が2月分(1月の0.1%下落)よりもやや拡大しています。
総合指数も前月比で0.2%下落しており、コアや総合ベースでは、短期的な価格調整の動きが続いています。
この点は、物価全体の基調が直ちに再加速しているわけではないことを示しています。

家計の物価見通しを示す「消費動向調査」を比較すると、2月から3月にかけて変化がより明確です。
2月(1月調査)では「5%以上~10%未満」や「10%以上」といった高めのインフレを予想する世帯が一定数存在していましたが、3月(2月調査)ではこれらの割合が低下しています。
特に「10%以上」は17.0%から14.3%へ低下しており、家計の高インフレ警戒感がやや後退している様子がうかがえます。
その一方で、「2%未満」の割合が増加しており、物価上昇が落ち着くとの見方が広がりつつあると考えられます。

先行きについては、2月・3月ともに「消費者物価(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)は、当面、緩やかに上昇していく」とされており、見通し自体は共通しています。
これは、賃金動向やサービス価格の影響などから、基調としての上昇が継続するとの判断が維持されていることを意味します。
ただし、足元の数値やコア物価の動きを踏まえると、急激な上昇というより、低位での安定的な上昇が想定されていると整理できます。

総合すると、令和8年2月から3月にかけて、消費者物価は「上昇基調を維持しつつも、勢いは弱含み」という評価がより明確になっています。
基調判断の文言はやや前向きに修正されたものの、実際の数値や家計の見通しを見ると、物価上昇が加速する局面ではなく、落ち着いた動きを確認する段階に入っていると言えるでしょう。
今後は、賃金動向やサービス価格の動きが、物価の基調を左右する重要なポイントとなります。

消費者物価

2.先行きについて

先行きについては、以下のとおりです。

令和8年2月令和8年3月
先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待される。



ただし、今後の物価動向や米国の通商政策をめぐる動向などの景気を下押しするリスクに留意する必要がある。

また、金融資本市場の変動等の影響に引き続き注意する必要がある。
先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるものの、中東情勢の影響を注視する必要がある。






また、金融資本市場の変動の影響や米国の通商政策をめぐる動向などに注意する必要がある。
先行きの比較:中東情勢への懸念が追加されている。

令和8年3月の記載は、書き振りが少し異なっていますが、中東情勢の記述が加わった以外は、変化はありません。

3.まとめ

令和8年2月分と令和8年3月分の月例経済報告を比較すると、消費者物価の基調については、両月とも「上昇」を基本評価としながらも、その勢いに対する見方には違いが見られます。
2月分では「上昇テンポが緩やかになっている」とされたのに対し、3月分では「このところ緩やかに上昇している」と表現されており、物価上昇が急激に再加速したわけではないものの、基調としての上向きが維持されていることが示されています。

数値面を見ると、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は前月比でいずれも0.1%上昇と小幅な伸びにとどまっています。
また、前年比の上昇率は2月から3月にかけてさらに低下しており、中期的に見た物価上昇率は緩やかに鈍化していることが分かります。
コア物価については両月とも「このところ横ばい」とされ、前月比では下落が続いており、広範な価格上昇が進んでいる状況ではありません。

家計の物価見通しに目を向けると、高いインフレを想定する世帯の割合が2月から3月にかけて低下しており、「物価は上がり続けるが、急激ではない」という見方が広がっていると考えられます。
これは、実際の物価指標の動きとも整合的であり、消費者の体感と統計データが大きく乖離していない状況と言えます。

先行きについては、両月とも「当面、緩やかに上昇していく」との見通しが示されています。
賃金動向やサービス価格の影響を受けつつ、物価は底堅く推移するものの、急騰する局面ではないという認識が維持されています。
総じて、足元の消費者物価は「上昇基調を保ちながらも、落ち着いた動き」に移行しつつある段階にあり、今後は持続的な賃上げや消費動向との関係がより重要な判断材料となっていくでしょう。

4月の月例経済報告が公表されましたら、再度、解説致します。

ご不明点やお悩みがございましたら
お気軽にご相談ください。

03-6262-1043 営業時間:9:00~18:00
(事前連絡で土日祝も対応可能)