月例経済報告 令和7年(2025年)11月 ー住宅建設・輸入・国内企業物価の変化と今後の見通しー

月例経済報告 令和7年(2025年)11月 ー住宅建設・輸入・国内企業物価の変化と今後の見通しー

令和7年(2025年)11月の月例経済報告では、景気の基調判断は「緩やかに回復している」とされ、10月と同様の評価が続いています。
しかし、詳細を見ていくと、いくつかの項目で表記に変化があり、特に住宅建設、輸入、国内企業物価の3項目が注目ポイントとなっています。先月は2項目に変化が見られましたが、今月は1項目増えており、景気の動きに微妙な変化が生じていることが分かります。

住宅建設については、両月とも「弱含み」という基調判断で一致しているものの、新設住宅着工数の動きには違いがあります。10月報告では8月の着工戸数が前月比0.1%減の71.1万戸とわずかな減少を示しましたが、11月報告では9月が前月比2.4%増の72.8万戸と増加に転じています。とはいえ、基調判断は変わらず、住宅市場の回復は限定的と見られます。

輸入については、10月報告では「持ち直しの動きがみられる」とされ、アジアからの輸入が回復をけん引していました。しかし、11月報告では「おおむね横ばい」と評価が変わり、アジアやEUからの輸入は横ばい、米国のみが持ち直し傾向を示しています。これは、国際需給や為替の影響による地域差を反映していると考えられます。

国内企業物価は、10月報告で「横ばい」とされていたものが、11月報告では「緩やかに上昇している」と評価が変わりました。特に、電力料金調整後の数値が0.6%上昇と大きく伸びており、エネルギーコストを除いた実質的な価格上昇が進んでいることが分かります。輸入物価の上昇や円安の影響が企業コストに波及している点も見逃せません。

こうした変化は、景気全体の回復基調を維持しつつも、個別項目で異なる動きが出ていることを示しています。今後の見通しを考える上で、これらの項目の動向を注視することが重要です。

この記事を読んで分かること

  • 景気は緩やかに回復基調を維持
  • 住宅建設は弱含みで回復は限定的
  • 輸入は横ばい、米国のみ持ち直し傾向
  • 国内企業物価は横ばいから緩やかな上昇へ
  • 円安やエネルギーコストが企業収益に影響
  • 下振れリスク要因は依然として存在

1.令和7年11月分について

(1)主要な項目

主要な項目を、令和7年10月令和7年11月について、以下掲載します。

令和7年10月令和7年11月
基調判断景気は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心
にみられるものの、緩やかに回復している
景気は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心
にみられるものの、緩やかに回復している
個人消費持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
設備投資緩やかに持ち直している緩やかに持ち直している
住宅建設このところ弱含んでいる弱含んでいる
公共投資堅調に推移している堅調に推移している
輸出おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
輸入持ち直しの動きがみられるおおむね横ばいとなっている
貿易・サービス収支赤字となっている赤字となっている
生産横ばいとなっている横ばいとなっている
企業収益米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられる中で、改善に足踏みがみられる米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられる中で、改善に足踏みがみられる
業況判断おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
倒産件数このところ増加がみられるこのところ増加がみられる
雇用情勢改善の動きがみられる改善の動きがみられる
国内企業物価このところ横ばいとなっているこのところ緩やかに上昇している
消費者物価上昇している上昇している
月例経済報告10月・11月の比較。
住宅建設、輸入、国内企業物価の表記に変化がある。

今月は、表記に変化が見られたのは、住宅建設、輸入、国内企業物価の3項目です。住宅建設は、先月に引き続き、表記に変化が見られます。
先月、変化が見られたのは、2項目に留まりましたが、今月は1項目増えて、3項目となりました。
以下、記述に変化のありました住宅建設、輸入、国内企業物価について詳しくみていきます。

解説

(2)住宅建設

①令和7年10月と令和7年11月の比較

令和7年(2025年)10月と11月の詳細を、以下記載します。

令和7年10月令和7年11月
住宅建設は、このところ弱含んでいる。

新設住宅着工戸数は、8月は前月比0.1%減の年率 71.1万戸となった。

利用関係別にみると、持家及び分譲住宅は、このところ弱含んでいる。

貸家は、横ばいとなっている。

なお、首都圏のマンション総販売戸数は、おおむね横ばいとなっている。

先行きについては、当面、弱含みで推移していくと見込まれる。
住宅建設は、弱含んでいる。

新設住宅着工戸数は、9月は前月比2.4%増の年率72.8万戸となった。

利用関係別にみると、持家及び分譲住宅は、弱含んでいる。

貸家は、このところ弱含んでいる。

なお、首都圏のマンション総販売戸数は、おおむね横ばいとなっている。

先行きについては、当面、弱含みで推移していくと見込まれる。
「令和7年10月・11月の住宅着工数を比較|マンション販売動向と住宅市場予測」

②解説

令和7年10月と11月の月例経済報告を比較すると、住宅建設市場の基調は両月とも「弱含み」という表現で一致しており、全体として回復の兆しは見られません。
ただし、詳細を確認すると、新設住宅着工数やマンション販売動向、利用関係別の動きに微妙な違いがあり、今後の住宅市場予測を考える上で注目すべきポイントが浮かび上がります。

まず、新設住宅着工数の動きを見ると、10月報告では8月の着工戸数が前月比0.1%減の年率71.1万戸とわずかな減少を示しました。一方、11月報告では9月の着工戸数が前月比2.4%増の年率72.8万戸と増加に転じています。
この差は、短期的な需給調整や季節要因による変動と考えられますが、報告文では両月とも「弱含んでいる」という基調判断を維持しており、単月の増加が住宅市場の回復を意味するわけではありません。むしろ、増加幅が限定的であることから、全体としては低水準で推移している状況が続いていると解釈できます。

利用関係別に見ると、両月とも持家及び分譲住宅は弱含みとされており、個人の住宅取得意欲は依然として低調です。
背景には、住宅ローン金利の上昇による負担増や、実質賃金の伸び悩みによる購買力の低下があると考えられます。こうした要因が、持家取得の判断を慎重にさせているのです。
一方、貸家については、10月報告では「横ばい」、11月報告では「このところ弱含んでいる」と記載されており、賃貸需要がやや鈍化している兆しが見えます。これは、投資用不動産市場にも慎重な姿勢が広がっている可能性を示唆しています。

首都圏のマンション販売動向については、両月とも「総販売戸数はおおむね横ばい」とされており、分譲マンション市場は安定的に推移しています。
ただし、販売戸数が横ばいであることは、需要が強いわけではなく、供給側が調整を行っている可能性もあります。価格高騰や金利上昇により、購入層が限定されている点は引き続き注視すべきでしょう。
マンション価格の高止まりは、住宅購入を検討する層にとって大きなハードルとなっており、今後の住宅市場予測においても重要な要素です。

先行きについては、両月とも「当面、弱含みで推移していくと見込まれる」との記述があり、政府の見解としては住宅市場の回復には時間がかかると見ています。
これは、人口減少と世帯数の伸び鈍化による住宅需要の基盤縮小、資材価格や人件費の上昇による建設コストの高止まり、そして金融政策の影響による金利水準の制約といった構造的要因に起因します。

総じて、10月と11月の報告を比較すると、着工戸数の増加という一時的な改善は見られるものの、基調判断は「弱含み」で一致しており、住宅市場の回復は限定的です。
特に、持家・分譲住宅の低調さと貸家の弱含みへの転換は、住宅需要全体の慎重姿勢を示しています。
今後は、住宅ローン金利の動向や所得環境の改善が市場回復の鍵となるでしょう。住宅市場の動向を見極めるには、単月の数字に一喜一憂するのではなく、基調の変化を冷静に追うことが重要です。

住宅建設

(3)輸入

①令和7年10月と令和7年11月の比較

令和7年(2025年)10月と11月の詳細になります。

令和7年10月令和7年11月
輸入は、持ち直しの動きがみられる。

地域別にみると、アジアからの輸入は、持ち直しの動きがみられる。

米国及びEUからの輸入は、おおむね横ばいとなっている。

先行きについては、持ち直しに向かうことが期待される。
輸入は、おおむね横ばいとなっている。

地域別にみると、アジア及びEUからの輸入は、おおむね横ばいとなっている。

米国からの輸入は、このところ持ち直しの動きがみられる。

先行きについては、持ち直しに向かうことが期待される。
「令和7年10月・11月の輸入動向を比較|アジア・米国・EUの最新トレンド」

②解説

10月と11月の月例経済報告を比較すると、輸入の動向には微妙な変化が見られます。
両月とも先行きについては「持ち直しに向かうことが期待される」との見方で一致していますが、現状の評価には違いがあります。10月報告では「輸入は持ち直しの動きがみられる」とされ、改善傾向が示唆されています。一方、11月報告では「輸入はおおむね横ばい」と記載され、回復の勢いがやや鈍化した印象を与えます。この違いは、地域別の輸入動向にも反映されています。

地域別に見ると、10月報告ではアジアからの輸入が「持ち直しの動きがみられる」とされ、アジア地域の需要回復が全体の輸入を押し上げていたことが分かります。米国およびEUからの輸入は「おおむね横ばい」とされ、欧米市場からの輸入は安定的ながら大きな伸びは見られませんでした。
これに対し、11月報告ではアジア及びEUからの輸入が「おおむね横ばい」とされ、10月に見られたアジアの回復傾向が一服したことがうかがえます。さらに、米国からの輸入については「このところ持ち直しの動きがみられる」と記載され、欧米のうち米国が輸入回復のけん引役となりつつあることが特徴的です。

この変化の背景には、為替相場や国際的な需給環境の影響が考えられます。
円安基調が続く中で、輸入コストの上昇が企業の仕入れ判断に影響を与えている可能性があります。また、アジア地域では半導体や電子部品などの供給制約が緩和され、10月時点では回復が進んでいたものの、11月にかけては一時的な調整が入ったとみられます。
一方、米国からの輸入が持ち直している背景には、エネルギー関連や高付加価値製品の需要増加があると考えられます。特に、原油や天然ガスなどのエネルギー資源は、世界的な価格変動の影響を受けやすく、日本の輸入額にも直結します。

EUからの輸入は両月とも「おおむね横ばい」であり、安定的な推移が続いています。
これは、欧州経済の成長が緩やかであることや、日本企業の調達先としての構造的な位置づけが変わっていないことを示しています。今後もEUからの輸入は大きな変動要因にはなりにくいと考えられます。

先行きについては、両月とも「持ち直しに向かうことが期待される」との見方で一致しており、輸入全体としては緩やかな回復基調が続くと予想されます。
ただし、地域別の動きには差があり、アジアの回復が一服する一方で、米国からの輸入が増加する傾向が見られることから、輸入構造に変化が生じる可能性があります。企業にとっては、為替リスクや国際的な物流の安定性を踏まえた調達戦略の見直しが重要になるでしょう。

総じて、10月と11月の報告を比較すると、輸入全体の基調は「持ち直し期待」で共通していますが、現状評価は10月がやや前向き、11月が横ばいと慎重な姿勢を示しています。地域別では、アジアの勢いが弱まり、米国が回復の中心となりつつある点が注目されます。今後の輸入動向を見極めるには、為替相場、国際需給、エネルギー価格の変化を継続的に追うことが不可欠です。

輸入

(4)国内企業物価

①令和7年10月と令和7年11月の比較

令和7年(2025年)10月と11月の詳細になります。

令和7年10月令和7年11月
国内企業物価は、このところ横ばいとなっている。

9月の国内企業物価は、前月比0.3%上昇し、夏季電力料金調整後でも、前月比0.3%上昇した。

輸入物価(円ベース)は、このところ緩やかに上昇している。

企業向けサービス価格の基調を「国際運輸を除くベース」でみると、このところ上昇テンポが鈍化している。
国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している。

10 月の国内企業物価は、前月比0.4%上昇し、夏季電力料金調整後では、前月比0.6%上昇した。

輸入物価(円ベース)は、このところ緩やかに上昇している。

企業向けサービス価格の基調を「国際運輸を除くベース」でみると、このところ上昇テンポが鈍化している。
「国内企業物価は横ばいから緩やかな上昇へ|輸入物価とエネルギーコストの影響」

②解説

令和7年10月と11月の月例経済報告を比較すると、国内企業物価の動向には注目すべき変化があります。
両月とも輸入物価(円ベース)は「このところ緩やかに上昇している」とされ、国際的な資源価格や円安の影響が続いていることがうかがえます。
しかし、国内企業物価の評価は10月と11月で異なり、基調の変化を読み取ることができます。

10月報告では「国内企業物価は、このところ横ばいとなっている」とされ、物価上昇圧力が一服している印象です。実際、9月の国内企業物価指数は前月比0.3%上昇にとどまり、夏季電力料金調整後でも同じく0.3%の上昇でした。これは、電力料金の調整が企業物価の上昇を抑える要因となったことを示しています。
一方、11月報告では「国内企業物価は、このところ緩やかに上昇している」と記載され、基調がやや強含みに転じています。10月の国内企業物価指数は前月比0.4%上昇し、夏季電力料金調整後では0.6%の上昇と、調整後の数値が大きく伸びている点が特徴です。これは、電力料金の影響を除いた場合、企業物価の上昇圧力が強まっていることを意味します。

この違いの背景には、原材料価格やエネルギーコストの変動があります。円安基調が続く中で、輸入原材料の価格が上昇し、企業の仕入れコストに影響を与えています。輸入物価の緩やかな上昇は、国際需給の変化や為替リスクの影響を反映しており、特に原油や天然ガスなどのエネルギー関連品目は、日本企業のコスト構造に直結します。

一方、企業向けサービス価格指数の基調については、両月とも「国際運輸を除くベース」で見ると「このところ上昇テンポが鈍化している」とされ、サービス分野では価格上昇の勢いが弱まっています。これは、人件費や物流コストの上昇が一服し、価格転嫁の動きが落ち着いてきたことを示唆しています。
製造業や建設業などの財価格が上昇する一方で、サービス価格の伸びが鈍化する構造は、企業収益や価格戦略に複雑な影響を与える可能性があります。

総じて、10月と11月の報告を比較すると、国内企業物価は横ばいから緩やかな上昇へと基調が変化しており、物価上昇圧力が再び強まる兆しが見えます。
特に、電力料金調整後の数値が大きく伸びている点は、エネルギーコストを除いた実質的な価格上昇が進んでいることを示しています。今後の見通しとしては、輸入物価の上昇が続く限り、国内企業物価も緩やかな上昇基調を維持する可能性が高いでしょう。
ただし、企業向けサービス価格の鈍化傾向が続けば、全体の物価上昇ペースは限定的となる可能性があります。

企業にとっては、原材料コストの上昇に対応するための価格戦略やコスト管理が重要です。また、為替リスクや国際需給の変化を踏まえた調達戦略の見直しも不可欠です。
国内企業物価の動向は、企業収益や価格政策に直結するため、今後も月例報告の数値を注視する必要があります。

国内企業物価

2.先行きについて

先行きについては、以下のとおりです。

令和7年10月令和7年11月
先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクには留意が必要である。

加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。

また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要がある。
先行きについては、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されるが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクには留意が必要である。

加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。

また、金融資本市場の変動等の影響に一層注意する必要がある。
先行きの比較。
11月は10月と同内容となっている。

11月の記載は、先月と同内容となっています。

3.まとめ

令和7年(2025年)10月と11月の月例経済報告を比較すると、景気全体の基調判断は「緩やかに回復している」で一致しており、大きな方向性に変化はありません。
しかし、住宅建設、輸入、国内企業物価の3項目で表記に変化が見られ、景気の中身に微妙な違いが生じています。

住宅建設は両月とも「弱含み」とされ、回復の兆しは限定的です。新設住宅着工数は10月報告で減少、11月報告で増加と一時的な改善が見られますが、基調判断は変わらず、住宅市場の慎重姿勢が続いています。
背景には、住宅ローン金利の上昇や実質賃金の伸び悩みがあり、持家・分譲住宅の需要は低調です。貸家についても、10月は横ばい、11月は弱含みと評価が変わり、賃貸需要にも鈍化の兆しが見えます。

輸入は、10月報告で「持ち直しの動きがみられる」とされ、アジアからの輸入が回復をけん引していましたが、11月報告では「おおむね横ばい」と評価が変わりました。アジアやEUからの輸入は横ばい、米国のみが持ち直し傾向を示しており、地域別の動きに差が出ています。
背景には、円安による輸入コスト増や国際需給の変化があり、企業の調達戦略に影響を与えています。

国内企業物価は、10月報告で「横ばい」から、11月報告では「緩やかに上昇」に転じました。特に、電力料金調整後の数値が0.6%上昇と大きく伸びており、エネルギーコストを除いた実質的な価格上昇が進んでいます。
輸入物価の上昇や円安の影響が企業コストに波及し、価格転嫁の動きが強まっていることがうかがえます。
一方、企業向けサービス価格は上昇テンポが鈍化しており、物価全体の上昇ペースは限定的です。

先行きについては、雇用・所得環境の改善や政策効果が景気回復を支えると期待される一方、米国の通商政策や物価上昇による消費者マインドの悪化、金融市場の変動など、下振れリスクには引き続き注意が必要です。

総じて、景気は緩やかな回復基調を維持していますが、住宅市場の低調、輸入構造の変化、企業物価の上昇など、個別項目で異なる動きが出ています。企業や投資家にとっては、こうした変化を踏まえた戦略の見直しが不可欠です。

12月の月例経済報告が公表されましたら、再度、解説致します。

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